かじドゥンドゥン

ホールド・ザ・ダーク そこにある闇のかじドゥンドゥンのレビュー・感想・評価

3.5
「息子を狼にさらわれたので、夫が戦争から帰ってくる前にせめてその狼を殺めて落とし前を付けて欲しい」という女の依頼を受け、狼に詳しい老動物学者がアラスカの僻地にある集落を訪れる。しかしそこで彼が直面するのは、獰猛な狼ではなく、雪に閉ざされた世界で孤独に生きる者たちの心の闇、法も常識的なモラルも届かない村に鬱積した負の歴史だった。

苛酷な自然と野生動物を相手取ったサバイバル映画かと思いきや、主眼は人間にある。一見理解し難い人間心理が錯綜するなかで、いわば「子殺し」が行われ、その事実に村共同体がいったんはざわつくも、静かに飲み込んでゆく。公権力の手も届かないこの闇に、動物行動学の知見がどこまで踏み込めるのかどうか・・・。

長編だが大味ということはなく、細部の描写(とくに暴力的な場面)が丁寧で、生々しい。