シネマスナイパーF

悪女/AKUJOのシネマスナイパーFのレビュー・感想・評価

悪女/AKUJO(2017年製作の映画)
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★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★=100.0
お、韓国ノワール版キル・ビル?
確かにプロットは近かった
そして当然、キル・ビルの「ほうら、コレ、オレの好きなものイロイロ混ぜたヤツだぜ〜!お前らも好きだろ〜?」的な、楽しい、ものではない
キル・ビルは本来陰惨であるはずの物語を音楽使いや演出でそういうものにしているのであって、普通は、仇と斬り合う時にサンタエスメラルダを流すようなマネはしない…アレはアレで最強にイカしてるけど
この「悪女」は、楽しいオマージュや笑える要素を排した、哀しき花嫁の物語

結論『星100』
無論これは主観であって、合う合わないがあるということは分かってほしい


完璧な作品とは言わないもちろん
アクションアクションアクションを期待して行くと、中盤のメロドラマは正直かったるいかな
そのアクションも、アクションそれ自体は実は新鮮味という部分ではそこまでな気もする
回想に次ぐ回想も多いし、何より、終始どっかで見たような感じが続くと思う人は絶対いる

しかし、このよくある感は当然で、過去作からの引用当然キル・ビルのような雰囲気再現のためのものではないストーリーの骨組みは、一定の面白さ確保にはなっているし、主人公が"二度死ぬ"展開、オープニングと対を成すエンディングなど綺麗にまとめてもある
ヒントの散らばせ方も悪くなく、特に、死んでいたと思っていた奴が生きていたという展開に割りと簡単に納得がいくあたり上手い
女性暗殺者ものに疎くキル・ビルばっかりで申し訳ないのですが、ヴァニータ戦を思い出す子供との鉢合わせも、トラウマ呼び起こし描写として機能しているとりあえずキル・ビル好きなんだよオレは

メロドラマ要素も、タラタラ続くわけではないし、男側の動機が「ひとめぼれ」という分かりやすいものなので、グイグイいく様子も納得だし、この手の話にしては主人公の内面が割と弱めな部分も、急接近に説得力を持たせている
また、非常に分かりやすいが的確な、表の顔は舞台女優という設定もいい
安易すぎる展開なのに、あまりに真っ直ぐな男と哀しき宿命を背負った主人公には正直泣かされました

話を終わらせるための要素以外はあまり見せない語らないスタイルも、作品世界の広がりにワクワクさせてくれるし、底知れぬ闇を感じさせる
ジョン・ウィック1作目のスタイルに近いかな


そしてやはりこの作品の魅力は、なによりも滅茶苦茶格好いいアクションシーン

冒頭のワンカット風は圧巻で、ハードコア風な主人公視点から劇映画的第三者視点へとシームレスに変化したときの快感は忘れられない
この視点変更はオープニング以外でも度々登場しますし、他にも、落下からの引きでそのままの画の監視カメラ画面へと繋がったり、登場人物の身体にズームからの引きで場面転換など、既存の様々なイカす繋ぎ方を釣瓶打ちしてくるため非常に好みだった

バイクに乗りながらの日本刀シークエンス、ラストのバス内戦闘など、ワンカット風の場面はどれも異様にテンションの高い凄いもので、同じく韓国映画アシュラのカーチェイスを長尺アクション満載で数回見ることができる素晴らしいサービス
クライマックス、主人公が車を盗み走り出してからのボンネット運転が、さながらマッドマックス
バスにぶら下がる様子はポリス・ストーリー

映画そのものがアクションであり、映画ならではの移り変わり演出が気持ちよく、本当に全てが好きだった


終わってみるとそんなに殺していない、安直、いらん場面多くね、とか、沢山文句が出てくるだろうことはわかりますが、ドラマ部分自分は悪くないと思ったし、それでいてアクション映画としてこのレベルですよ
演出等含め、本当に大好物で固めた作品でした
そう、これはオレの大好物であって、誰が食っても美味しい飯ではない!
隙もある、けどオレは星100!そういう映画!