くりふ

パダヤッパ いつでも俺はマジだぜ!のくりふのレビュー・感想・評価

4.0
【踊れ!開いた口が塞がらぬまま】

『ムトゥ』は未見ですが、5~6本みたラジニ映画中これが一番面白かった。本人の出世物語も取り込んだような、ラジニ神話おまとめ篇、に思えました。

バスの車掌から成り上がった彼が、観客の力を背にカーストも吹き飛ばし、本作の物語では、司祭を務めるまで登り詰めちゃったってところでしょうか。

インドでは南に行くほど、身近なものに聖性を感じる傾向があるそうですが、庶民から現れたスーパースターを、タミルで人気?のパダヤッパ神に準え、祭り上げて楽しんじゃえ!という感覚は、わかる気がするといえばします。

が、そんな理解がなくっても、ラジニ映画は足腰で見ればよいのかと(笑)。心を一緒に舞い上げて踊れりゃそれでよし!たぶん。…胸焼けするけど。

まずテーマソング!(笑) いーですねー能天気晴れまくり!パダヤッパ!とサビに合いの手入って、タミル語版The Hustleの如しです。笑える呪詛のように残って忘れられない困ったな。サントラ欲しいけど。

初登場でアンタだれ?と問われれば、歌って踊って応えるラジニ。しかもクレーン撮りだぜ針小棒大の極み!で、歌もいいけどツボ割ってと、なぜか続けて組体操のてっぺんに登ってゆく脈絡ナッシング!パワフルな膝かっくん展開はラジニ映画の真骨頂。いやー酔いますわー。

いちいち牛の登場で盛り上がっちゃうお話もすごいぞ!カンフル牛だ!色モーなはずなのに赤で興奮するスペシャル牛だぜ!!

善悪それぞれ登場する、わかり易いツイン・ヒロインの映画ですが、両者ともお肉のたぷたぷ美が素晴しい!踊るとお腹もぷるぷるです。

で、悪のヒロインが敵ながらあっぱれ。本作の成功は彼女に尽きると思う。ここまで徹底して欲望に正直で、かつ漢らしい悪女は久しぶりに見ました。日本じゃたぶん絶滅種でしょう。

ラスト、幕の引き方なんて最高! いよッ、大統領!と掛け声入れたくなりますねマジで(笑)。終わってみると、ニーランバリ、という名前が心に刻まれてしまうのです。

「強欲な男と怒れる女はろくな人生を送らない」そんな彼女に何度も贈られる、大仰なのに納得しちゃう決め台詞!

どう見てもただのオッサンなのに、ラジニにこれが嵌るのは、本作では、ニーランバリを熱演するランミャーさんの魅力が下支えするからでしょう。破壊神シヴァの前で踊り狂う彼女など、夢に見そうなほどの歪美でした。

あ、カーチェイスとかクンフーなんかも、テンコ盛りなんですね。温泉だか石油だかが噴き出たか!みたいに垂直に吹き飛ぶ車に口ポカン。もう、全篇通じて口開けっ放しですが、お腹はいっぱいになるのでした。

<2012.7.23記>
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