イルーナ

クロモフォビアのイルーナのレビュー・感想・評価

クロモフォビア(1966年製作の映画)
4.1
『ハーピア』に続いて観た、ラウル・セルヴェの作品。
タイトルのChromophobiaとは、「色彩恐怖症」の意味。

色や自由、個性を次々に奪っていく軍隊。しかし女の子が育てていた一輪の赤い花が意思を持ち、ついに反撃が始まる……

しかしこれ本当に表現の豊かなこと。印象に残ったシーンを上げるだけでもいくつも出てくる。
軍隊の襲撃と迫害で、大聖堂のバラ窓がクモの巣になったり、水を撒いてたら木が生えるのでなく、絞首台が生えてくるという描写。これだけでもすごいセンスだと思っていたのですが、後半がさらに凄い。
投光器の光をプリズムで赤・青・黄色の3色に分解、それが絵の具に変化する。絵の具は踏みにじられても、そこからまた色が飛び出す。抑圧への抵抗を、こんな形で表すとは!
花の精はたとえ散らされても、市民に宿る形で増殖し、地下から抵抗運動を起こす。まんまレジスタンスだ!
(余談だけどあの女の子、どうぶつの森に出てきてもおかしくない風貌だと思った)

ちなみに花の精のモデルは、某所でドイツの伝承に登場するトリックスター、「ティル・オイレンシュピーゲル」ではないか?と指摘されていたのですが、画像検索したところ……確かに似ている。そして名前を分解すると、オイレンは知の象徴である「フクロウ」、シュピーゲルは化身を体現する「鏡」となる。劇中でもフクロウに変身する描写があったし、鏡を使う描写もあった。やはりこれと見て間違いなさそう。
トリックスターは、いつの時代も硬直した状況に風穴を開ける存在なんですね。
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