ダイナ

JUNK HEADのダイナのネタバレレビュー・内容・結末

JUNK HEAD(2017年製作の映画)
3.9

このレビューはネタバレを含みます

製作期間7年のストップモーションアニメ。監督一人で原案・キャラクターデザイン・編集・撮影・照明・音楽全て担当したという点が驚愕。登場キャラはどれも初見不気味だけど段々可愛く見えてくる不思議。公式HPを見てほとんどのキャラに名前があることを知りました。各キャラの独特な喋り方真似したくなります。

本作の世界観、生態系の残酷さをちゃんと映していて怖い・暗い雰囲気ではあるんですが、ギャグシーン、キャラの温かい掛け合いも多くて面白いです。

世界の怖さ、弱肉強食を真正面から描写していて、キャラの欠損描写が多いです。まずなんといっても壁の虫による食事風景、出血量で面くらいましたね。さっきまで普通に会話していた相手が死んでしまう事もザラではない世界観なので命のあっけなさがまじまじと映されています。設定の不気味さも怖いです。「クノコ」この世界では美味で足が速い食料らしいですが、受け取り場所が不気味すぎます。壁に埋まってるの人型生物の背中にしか見えないんです。正直この部屋もっと掘り下げてほしかった。(笑)切られたクノコはしばらく生きてるとかもう気持ち悪すぎて最高ですわ。

不気味さに負けずユーモアさも多分に溢れています。序盤博士の部屋にいたR2D2みたいな頭部型のキャラがカンチョーしたところで普通に笑っちゃいました。こいつがかまってかまってみたいな挙動しててかわいいんですが序盤にしか出なくて残念。地獄の三鬼神の使いにポン太が呼ばれるのか!ってBGMで盛り上げといて「いや無理だな」と速攻判断されるシーンであったり、暗い世界観の中だけどキャラの掛け合いはコミカルな所が面白いです。

なんといってもキャラ同士の掛け合いに温かさを感じるのが環境の過酷さとのギャップで際立って感じます。特に好きなのはポン太が8番浄化装置管理人に椅子を作ってあげる所(後の展開を考えると楽させない方が良かったのか...?)と赤フードの子にクノコを返された後で、クノコを二個置いて去る所ですかね。ホクロの分も置いていってあげたという解釈ですが、些細だけど優しい描写にほっこりします。

パートンは不老不死ですが今の方が生きている気がすると言っていました。地下では食べられそうになったり、目の前で生き物達が死んだりと命が消える場面に何度か直面してきました。これまでの生活では感じる事が無かった「死」が身近に存在することを改めて知ったことで、生きている実感を得ることができたんでしょう。生命の安全を究極に追求すると生の実感から遠ざかるというのはなんとも悲しい構造です。

命の木だとか8番浄化装置に繋がっていた巨大な頭だとか気になる伏線は回収されず。まさか続き物だとは...。調べるとどうやら本作は三部作の一章目とのこと。キャラとかジオラマは既存の物を使うシナリオであればいくらか製作期間短縮されるんでしょうか...。続編気長に待つとします。
ダイナ

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