このレビューはネタバレを含みます
09/26、AmazonPrimeにて視聴。
7年かけて、直接制作に関わったスタッフもかなり少なく(ワンマンとまでは言わないだろうが、うち一人がメイン)、それでストップモーションの長編アニメを作ったとのことで話題になっていた作品。
海外で評価されたことで国内でも注目されて今に至ったものだけれど、この点を思うと、なんか国内の現状に悲しくなってくるものはある。
世界観はディストピアSFの作品群の文脈に連なるもので、なんとなくあらゆる媒体のオマージュを感じたりとか、素材も、上階と下階の階層差、環境汚染、ロボット、異形と割と何でも詰め込まれている。
人間は(半ばロボットのようになることで)永遠に近い命を得ることは出来ていたがそれでもウィルスの流行もあってその数は減る一方であり、その活路を求めて放棄していた地下世界を調査することにする。主人公は人間で上階に住んでいたものの、そこでの暮らしも苦しくなり、その調査に参加することにした一般人である。だが、彼がたまたま落下した先で(人間だからという理由で)地下住人に神として呼ばれたりもする。
本作ではとにかく主人公の落下(たまに上昇)とクリーチャーとのバトル、地下住人たちとの交流と野生生活を営む動物のそれに近い突然の別れみたいなものが繰り返し描写されている。その中で主人公の姿も壊れては作り直され、結果、四パターンも存在することになる(うち二つはほぼ同じガワだが)。
視聴前はてっきり、人間の悪辣さを皮肉るようなディストピアものかと思っていたけれど、想像とは違ってもっとずっと色んな意味で明るいものだったかなという感じ。血反吐くささも重油くささも想像はしてたしそれもありはするけど香り方が思ってたより違ったなみたいな。全3部らしいのでこれだけで判断されたくないだろうけれど、思ってたよりはライトな内容だった。
話自体は分かりやすいものだけれど途中途中でやや描写の甘さが目立ち、この人物は何を考えてそういう言動をしているのか?など、狙いが汲み取りにくいところがあった。あと、話の組み立ての問題だと思うが、最後まで観れば補完できる程度とはいえ、やや描かれているものがどう繋がるのか分かりにくいというか、(本作内の範囲で)後で分かる程度でもあるのだけれど、その引っ張り方が冗漫なものに感じられたのでやや間延びしている印象もところどころ受けた。全3部作の予定らしいけれど、残りでもこの調子だとやや苦しい気がする。
あらすじにあるような、「命を実感した主人公は、マリガンたちと協力して人類再生の道を探る」なんかも、そこまでは本作ではあんまりそういうの観たなーとは思えない印象だった(確かにそういう話をしてはいるのだけれど……)。語らずともというやつなのかもしれないが。
アニメーションに関してはとにかくすごいに尽きる。7年かけて制作したとは思えないほど全体に技術的なムラが発生していたりもせず統一感があるし(メインスタッフが独学でこの技術をモノにしたというのだからほんとにすごい)、画面に切り取られてる作品世界は生々しくリアリティーがあって、本当に生き生きしていて、実際にそういう場所がありそうな気がしてくる。
個人的には前半のさらに最初のほうにあったコミカルさや気持ち悪さが好きだった。