てれ

ライースのてれのレビュー・感想・評価

ライース(2017年製作の映画)
4.2
商売を武器にのしあがっていくライースの姿は恐ろしいほど逞しく、まるで戦国時代の男のよう。

禁酒法下で酒を売り捌くムスリムのライースの志は市民の苦しい生活を助けること。そこにはムスリムやヒンドゥーといった宗教で分け隔てしない、平等な態度がある。口だけの州首相や政治家とは違い、ほんとうの市民の味方として熱狂的な指示を集める彼はただの商売人、ともすれば法に触れているはずなのに神々しく見えてしまう。イスラムの教えには喜捨という貧しい者に施すことを説いているが、ライースはまさにその生き方をしていると思う。

対する警察のマジュムダー。ライースを疑い、追っかけ、執拗に攻めていく姿は狂気も孕んでいるようでゾクゾクした。普段酒を売って嫌と言うほど大量の酒瓶を見ているライースに、チャイ(茶)をすすめる時の笑みはどこか悪魔的なものを感じた。

血に汚れて容赦ないこの世の現実とそれに抗うかのようなライースの貴い理想が絡み合い、最終的にどうなるのかとラストシーンまで画面に目が釘付けだった。

今までに観たシャー・ルク・カーンの作品のなかでいちばん渋味が出ていてカッコよかったと思う。「ディルセ 心から」で彼のシリアスな役を見ていたが、この「ライース」ではさらに演技が鋭く光っていた。マジュムダー役のナワーズッディーン・シッディーキーもいつも味のある演技を見せてくれるので本当に好きな役者。
この二人の共演、ファンにはたまらない。眼福でした!
てれ

てれ