ケンジモンデン

祈りの幕が下りる時のケンジモンデンのレビュー・感想・評価

祈りの幕が下りる時(2017年製作の映画)
4.0
東野圭吾が描く新参者シリーズの「優しい嘘」にはいつも心動かされる。原作は未読ですが、新参者最終章と言われる本作も、シリーズを締めくくるに相応しい切なくも優しい極上ミステリーでした。

このシリーズならではの「最後の最後まで答え(真相)が分からない」演出は健在。しかも今回は加賀刑事本人が事件と繋がっているという。中盤の「俺か!」からの展開は見事。

ネタバレは控えるにしても、とても悲しすぎる話だった。どこで間違えたのか、最初から間違っていたのか。原作にはもう少し救いはあるのかな…。
あまりの悲しさに感情移入こそできなかったですが、あの父子の悲運にはただただいたたまれなくなります。
日本という国の至るところに「何者でもないもの」がいて、彼らは人々の記憶からいつの間にか消えていく。東野圭吾作品はそういう「何者でもないもの」たちにスポットを当てるから優しくも悲しい。そして滋賀、仙台というキーワードに暗に秘めた、忘れてはいけない記憶も閉じ込めてある。原作も読もう。

加賀刑事の過去との訣別や、前半、松宮の成長も感じられたりと、新参者を通して人々が前を向いていく姿が強く微笑ましく映る。シリーズファンにはニヤニヤもののエンドロールも。
阿部寛、溝端淳平はじめ、原作の力に劣らないキャストの思い入れを強く感じる1本。