糸くず

犯罪の女王の糸くずのレビュー・感想・評価

犯罪の女王(2016年製作の映画)
3.6
『犯罪の女王』というタイトルだけだと、『極道の妻たち』のような話か女詐欺師の華麗なる遍歴のような話を想像してしまうが、わたしが実際に観ている間に思い浮かべていたのは名取裕子、というか『京都地検の女』の「主婦の勘!」というフレーズである。

「美容整形で日銭を稼ぐ母親が弁護士目指して勉強中の息子の周辺で起きる不可解な出来事に首を突っ込む」という筋書き自体がどことなく2時間ドラマを思わせるが、就職・受験地獄をあくまでコミカルなタッチのミステリーとして描くあたりも2時間ドラマっぽい。「司法試験よりも目の前の人の生死が大事」「息子を思う母の愛は強い」という素朴ながら真っ当なヒューマニズムも、そうした印象を強めている。

何よりも魅力的なのは個性的なキャラクター。ちょっと気になると何事にも首を突っ込まずにはいられない親バカな母親だけでもかなり強烈だが、彼女を助ける学生アパートの関係者たちも負けず劣らず強烈。母親の相棒を務める管理事務所の下っ端ゲーテ、「人間ビンゴ」を楽しむ学生ドック、引きこもりの女子学生ジンスクなどなど。こうして並べてみると、息子が一番影が薄いのがおかしい。

初めに出される水道料金の謎がおざなりにされるなどミステリーとしては底抜け感がかなり強いし、個性的なキャラを生かし切れているとは言い難いけども、この監督のセンスは嫌いじゃない。映画の設定のまま、2時間ドラマとして日本でリメイクしてシリーズ化したら人気が出そう。
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