せーや

ミスター・ノーバディのせーやのレビュー・感想・評価

ミスター・ノーバディ(2009年製作の映画)
4.0
2092年、人類は不死身となり
死に怯えることはなくなった。
そんな中、人類最後の限りある命を持つ男がいた。
彼は寿命を目前に、自らの過去を語り始める。

人生には、多くの選択肢があり、可能性がある。
ある一つの選択肢を選ぶことで、他の選択肢は消えてしまう。
だからこそ人は過去の選択を後悔することになる。

でも、その全ての選択肢を選ぶことが出来たら。

「バタフライエフェクト」を彷彿とさせますが
それよりももっと論理的で哲学的で、詩的。

主人公ニモ・ノーバディの人生の選択肢を
全て選択していくことによって
途中からどれがどの選択肢の結果なのか
わけがわからなくなります。

ニモは人一倍、選択肢について考えており
その選択肢に常に悩まされてきた。
あらゆる可能性を秘めている人生に
ときには幸せを感じ、ときには怯えてしまう。

「なぜ選択しなければならないのか?」

ニモにとってはどの選択肢も本当の人生であり
その全てが彼にとって大事な人生だった。
無限の可能性を秘めている人生のひとつを選ぶことは
彼にはできなかった。

人生経験を積んだ人の方が理解が速いと思います。
20年かそこらの経験しか積んでいない僕には
到底理解できない部分がいくつもありました。

ただ、その難解なストーリーを補ってくれるのが
美しくて鮮烈な演出と俳優の演技。

SF作品ではあるけれど、あくまで何気ない日常の美しさを描き
突然やって来る選択とその結果を際立たせている。

そして何よりもジャレッド・レトの演技力に呑まれる。
彼が選んだ道それぞれで、同一人物だけど別人のような演技を見せ
未来の老人ニモの全てを知っているかのような演技にゾッとする。

難しいという噂を聞いていたので
全てのシーンを無理に読み解こうとして逆に何も読み取れなかったので
もっとフラットに見た方が、いろいろなことを感じられるかも。

人生を経験してからまた見たい。
せーや

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