みちろう

桜桃の味のみちろうのレビュー・感想・評価

桜桃の味(1997年製作の映画)
4.2
初めて観る監督の作品、そもそもイランの映画自体初めて観た。アラビア文字のクレジットが新鮮。

自殺願望のあるタクシードライバー?の男が乗せていく客に高額な報酬と引き換えに自殺の手伝いを頼んでいくも一人目の青年にはドン引きされ、二人目の聖職者には神の教えを基に考え直すよう説得されてうんざり、途方に暮れてる時に乗ってきた三人目のおじいさんは一応承諾するも自身が体験した似たような出来事を語り始め男の気持ちを変えていく。

上映時間は2時間以内、ほぼ会話なストーリー、bgmも無く演出も控えめ、ただ車内と風景を交互に写すカメラワーク。ミニマリスト映画ってwikiに書いてあった表現がしっくりくる質素な作りは時に退屈に感じることもあったけど無駄を省いて純粋に映された登場人物とイランの情景を観て色んな感情が湧いた。asmrな工事現場の作業風景や砂利を踏むタイヤの音、夕日と丘、哀愁漂う光景が印象的。

おじいちゃんが語る生きる喜び、こんな素晴らしい世界なのにそれを今手放してしまうのはもったいないって考えは丁度自分も思ってたことですごく共感。

ただ、そこですんなりとほっこりをくれる映画ではなかった。結末を描かない終わらせ方は別に良いと思う。気になったのはここまで主人公に感情移入させといて観る側を振り払いポツンとあの穴に取り残すような最後のあの演出。まるでこの主人公もおじいちゃんのアドバイスも全部嘘って言われてる風に思えて見えなんか冷めた。
ちゃんとした意味があるならまた印象は変わると思うけどあんなびっくりする締めくくりをどう受け取ったらいいのか未だにわからん
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