このレビューはネタバレを含みます
小津を思い起こさせる独特の会話のテンポとカメラワークがクセになる。
物語を通して主人公に感情移入し切ったあと(主人公の背景も明かされないから、ほとんど感情移入できないのだが)、ラストで突き放された。「自分の人生、自分で考えろよ!」って言われた気がした笑
『ろくでなし』の吉田監督も、映画に感情移入することを否定しており、黒澤明などを批判していて、それを知ったときは「何故?」と思っていたが、キアロスタミの作品を観て「確かに」と思うようにもなってきた。映画という媒体は完全に監督の主観的な世界を一方的に見せられるもの。それはそれでいいのだけれど、そういった世界に慣れ切ってしまうと、観客は現実を「生きて」いけなくなるのだと思う。