くわまんG

桜桃の味のくわまんGのレビュー・感想・評価

桜桃の味(1997年製作の映画)
4.0
あらすじ:捉え方次第で世界は素晴らしく一変するよ。「嘘つけ世界はクソだ!」と思うのなら自殺を試みてみて。そうしたら何言ってんのかわかるよ。

自殺志願の中年男が、大金包んで自殺幇助を依頼するお話。イラン版『素晴らしき哉、人生』といった感じでしょうか。

自殺幇助を依頼された三人の反応がみどころ。重すぎて受け止められない少年、受け流して正論で論破しようとする青年、受け止めて必死で救おうとする老人。

「僕の苦しみは、君にはきっとわからない。頭で理解したり同情はできても、心の痛みは感じとれない。」という中年の叫びはごもっとも。でも老人は知っていました。過去自分が心を痛めた際の感覚を思い出せば、わからずとも「ああ、この人の苦しみが、あの時のわしの苦しみと同じだとしたら、さぞ苦しかろう。」と寄り添うことができることを。これが正しい経験値の使い方なんでしょうねぇ。

「わしは、さっき出会った君を友達だと思っとる。だから友達として頼む。人生を諦めないでくれ。」なんて応援されたら通常はヒきますが、ズタボロの心にはこれ(口に出さずともこの態度)だけが有効なんですよね。誰かに必要とされてなければ、人生は真っ暗に見えますからねぇ。

「こっちは知らない道だ。」と怖れる中年に対して、「わしは知っとる。少し遠回りだが、道がいいし景色も綺麗だ。」と答える老人。そっちは“困っている人を理由なく助ける”道で、時として「すまん、走りにくい道だった。」なんてこともある。でも歩み続ければいつか必ず、殺風景な砂山も緑溢れる丘に見えるよ!…というわけなんですねぇ。超絶眠たい映画でしたが、確実に誰かの魂を救ってそうですねぇ。