てっぺい

クワイエット・プレイスのてっぺいのレビュー・感想・評価

クワイエット・プレイス(2018年製作の映画)
4.0
【身動きが取れなくなる映画】
“音を立ててはいけない”、そのルールのもと延々と続く音のない世界とその緊張感に、見ているこちらまで身動きが取れなくなる。ホラー映画に音の緊張が相乗効果的に加わった画期的な映画。
◆概要
全米公開後オープニング成績5,000万ドル、累計興行収入も『ゲット・アウト』などホラー話題作超えを記録。主演は「ボーダーライン」のエミリー・ブラント、ジョン・クラシンスキーの実夫婦。ジョンは今作の監督・脚本も手がけた。聴覚障害を持つ娘役は、自身も同じ障害を持つ「ワンダーストラック」のミリセント・シモンズ。「ワンダー 君は太陽」のジョン・ジュプも。製作は『トランスフォーマー』シリーズのマイケル・ベイ。製作会社は『13日の金曜日』『エルム街の悪夢』など名作ホラーのリメイクを手がけたプラチナム・デューンズ。
◆ストーリー
音に反応して人間を襲う「何か」によって人類が滅亡の危機に瀕した世界。そこで生き延びている家族は、会話に手話を使い、歩くときは裸足で「決して音を立ててはいけない」というルールを守り暮らしていた。しかし、そんな一家に想像を絶する恐怖が襲う。
◆感想
さすが、映画のタイトルの通り、クワイエット過ぎる展開に、見ているこちらまで身動きが取れなくなる。“静”が延々と続くのに、眠くなるどころか緊張が高まって息をつくのも苦しくなる、そんな映画だった。
映画でよく、激しい音と共に観客が驚くインパクトが作られる事があるけど、この映画ほどインパクトが大きい映画はないかもしれない。“静”が続く分、音が生まれる瞬間の高低差、そのインパクトがハンパない。映画館もいいけど、DVDでイヤホンをして、音に集中して見れる環境だとなお最恐なのかもしれない。
そういう意味で、ホラー映画に音の要素を相乗効果的に加えた、画期的な映画だと言えるのではないでしょうか。少なくとも自分の映画経験ではそう。
◆以下ネタバレ◆
なにげに秀逸だったのが、エヴリンがつけた赤色のライト。あの村(?)では音を立ててはいけないルールのもと、そこに生きる家族が生き抜く為の知恵を幾重にも創作しているわけで、あのライトが緊急を告げる知らせ。道に砂を敷き詰めて音を立てない工夫をしていたり、緊急用の花火を持ち歩いていたり。驚異的な聴力を持つエイリアンに襲われた後の人間の生き方、きちんとその世界観が想像され、詰められていたと思う。単に音と映像のホラーではなかった。
ラストも、ここで終わって欲しいところで終わってくれる、納得のもの。エイリアンものはラストがめちゃくちゃな事が経験上多いだけに、その後がどちらとも取れる今回のラストはある意味納得・爽快でした。2作目が作れる展開ではあるけど、ある意味作って欲しくないかも笑(ちなみにウィキでは続編の製作がすでに開始とある)
側面的な話ではあるけれど、聴覚障害を持つ役に実際に同じ障害を持つ俳優を当てているのも、なまじ手を抜いてないこの映画の本気っぷりが伝わってくる。エヴリンの出産シーンでの、声を出せない恐怖との狭間で破裂する雄叫びも鳥肌モノだった。
人類が絶滅しかけるほど無敵な相手に銃で勝ってしまったり、パパが高性能器具を作れてしまったり、目の見えないエイリアンが家の中を駆けずり回れたりなど、ツッコミどころももちろんあったのだけど、この映画に関しては、音の恐怖に焦点を当てた、映画の珍しいエンターテイメント性ってところにしびれました!
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