すがり

クワイエット・プレイスのすがりのネタバレレビュー・内容・結末

クワイエット・プレイス(2018年製作の映画)
2.6

このレビューはネタバレを含みます

ポップコーンを買った愚か者は私です。

シチュエーションスリラーって自宅でソファみたいな腰掛けに仰向けで脱力しながらポップコーンを頬張って観るものでしょう?
そういう訳で買いましたが思ったより観客も多く、映画も静かだったので食べるのに非常に苦労しました。
残りはめでたく自宅でおやつです。

さて映画ですが、この手のものにしては楽しめるホラーだったと思います。
要因は間違いなく「音を立ててはいけない」という状況設定。
これによって文字通り息をつくのも躊躇われる緊張感の演出に成功しました。

惜しいのは成功がそこのみに留まっていて、映像と世界が矛盾しているのではないかと考え始めると一気に茶番感が増してくるところ。

子づくりや、コミュニケーション不足から来る不仲、滝に関する音の話、階段での引っ掛かりを無理矢理引っ張る行為など。
とても1年以上生き残ったとは思えない家族たち。

そして新聞紙。
冒頭は80日超(生物発覚から?)経過して始まって、その時点で街は壊滅状態ですから、新聞発行はかなり早い段階だったのでしょう。

新聞には音に反応するだとか色々書いてありますが、新聞があるということは、
ネタの収集、編集、印刷、流通が行われたという事になります。
しかも発行されている以上はそれらの瞬間瞬間は音の問題をクリアしているはず。
まさか音のネタを嗅ぎつけたのに大音量で発行し続け全滅したなんて間抜けは起きないでしょう。

それにそれだけ早い段階で相手の特性を発見していたなら現代世界が80日やそこらで屈するのは難しい。
何よりあの家族を見て、家族より世界が先に滅びつつある状況を受け容れるのが難しい。

また、大量のMISSINGが貼られている状況も時間の点で新聞同様に気になる。

あまり気にしてはいけないのかもしれない。

自宅で観るなら間違いなく退屈でしょう。
これは映画館で、観客に囲まれ、ポップコーンを頬張るという「音を立ててはいけない」状況を自らに課すことで初めてその真価を味わうことが出来ると言えます。

人には生理現象による音がどうしてもあって自宅ではそれらが緩みますから、それらを表現しなかった映画の家族らに近い状況で観るには劇場と観客しかありません。

そういう意味では優秀作ですね。


こういう雰囲気ならもっと早い段階の生き残りたちが、不意に起こしてしまう音でバンバン狩られて行って今作のラストに繋げたほうがジャンルとしては好みだったな。

音と怪物という映画要素を見せながら、主題は家族愛に向けられているからには尚更。
愛を感じる前に、という点が目に付いたのも残念。

何にしても夫婦で映画ですからきっと実際も良い家族なのでしょう。何よりです。
すがり

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