ベルサイユ製麺

クワイエット・プレイスのベルサイユ製麺のレビュー・感想・評価

クワイエット・プレイス(2018年製作の映画)
3.4

郊外の小さな街。人の気配は無くまるで廃墟のよう。
夫婦と娘、その弟、さらに下の幼い男の子が、もぬけの殻の薄暗いスーパーで日用品を物色している。一切声を発さず。忍び足で…。
荷物をまとめ、やはり無言で田舎道を移動する一向。
ビー!!!
不意に最後尾から電子音が静寂を切り裂き響き渡る!男の子がスーパーからオモチャを持ってきてしまった!
血相を変えて男の子の元へ全力疾走する父親だが、目にも留まらぬスピードで川から飛び出した怪物が男の子を連れ去ってしまう…!


それから一年とちょっと。
彼らは、田畑に囲まれた一軒家で生活をしている。以前と変わらずやはり無言で、物音を立てないようにして。変わったのは、末の男の子がいない事。母のお腹が大きくなっている事。


話題の『クワイエット・プレイス』、やっと観ましたよ。…評判のわりには、どなたのレビューをお読みしても《ザ・そこそこ》といった評価なのが気にはなってました。
でも、“音を立てたら死亡”なんて他で聞いた事ないし、すごく斬新そうなのに?…などと、ちょっと不思議に思っていたのですが、実際に観てみると微妙な評価もちょっと納得。“音を立てたら、怖いのが殺しに来る”なのですね!…それ普通じゃないか⁈キョンシーでもジェイソンでも、ホラー映画は大概は声出さないようにして隠れるよ!
…という事で、新感覚なのは、音を立てると死ぬロジックとかでは無くて、“音を立ててはいけないというシチュエーションのみを映画全編に適用している事”のようなのでした。
或る家族が、息を潜め何かに怯えながら生活する…。この状況に感じた既視感は、例えば『イングロリアス・バスターズ』の第一幕だったり、或いは『ユダヤ人を救った動物園 』だったりして、てことは今作の恐怖は例えばナチスのメタファーなのかな?なんて思って観進めたのですが…うん、あんまり関係無いかな。
とにかくひたすら息を潜めます。音出し厳禁なので、XVIDEOもイヤホンで視聴しますし(普通はそう)、ヒラメちゃんに塩せんべいを食べさせてもいけません!娯楽はがーまるちょばだけです。況してや赤ちゃんなんていた日にゃあ…なのですが、子供をつくっちゃったのですね、このご夫婦。その前提として、冒頭で子供を喪うシーンがあるわけですが、家族全員の命と新しい生命を天秤にかけたら普通は…と思わなくもないですの。
モンスターは結構ガッツリと姿を見せますね。顔面がめちゃくちゃに凶々しい構造で最高なのですが、ボディは割と貧相です。『クローバーフィールド』の怪獣みたい。で、こいつらは聴覚だけを頼りに行動している捕食者なので、息を潜めたり、はたまた花火でおびき寄せたりと手練手管でサスペンス的展開を作るのですが、…何故だか不思議と全然怖くない!
…全くの憶測、感覚的なモノなのですが、この監督ホラー的な間の取り方がちょっと下手なのではないかしら?もう少しジワジワ引っ張ればもっとドキドキ出来そうなのに…。外連味が足りないというか、ジャンル映画的な味付けを避けているのかもしれませんな。
に、しても気になってしまったのはモンスターの弱点が示されるシーンのタイミングの早さです。途中から「どうせこれで倒すんでしょ」的に思えてしまうし、せめて何かミスリードさせるようなディテールとか、条件の絞り込みをさせる展開とか欲しかったです。
個人的に好きだったシーンはコーン畑の中とか、遠景の花火とか、何処と無くスピルバーグ味が感じられるところ。もっとバーグ味が有っても良い気がしますね。どんな日常でも楽しみは有る、というような。あと、手話もっと活かせ!
…とかとかは、全て分かってて、短くしてハイコンセプト的な勢いを出すために削ぎ落としたのかもしれません。充分に楽しめたので問題無し!次回作の話もあるようなので期待したいです。
個人的に今後見たいシーンは…
⚫︎「マァザ・ファッ…」まで言って殺されるサミュエル・L・ジャクソン!
⚫︎韓国からマ・ドンソク、インドネシアからイコ・ウワイスとヤヤン・ルヒアンが合流して、繊細さのカケラも無い展開に!
⚫︎長女役がいつのまにかミリー・シャロピ(ヘレディタリーのチャーリー!)に交替。彼女が舌を「コッ」と鳴らす度に、恐れおののき逃げ出すモンスター達!!
⚫︎ブルおじさんを起こさないようにジェリーを追いかけるトム!
⚫︎ジェリーそっくりな怪力ネズミにぶっ飛ばされるトム!

…あれ、モンスターの話消えた⁈