えむえすぷらす

ハンターキラー 潜航せよのえむえすぷらすのレビュー・感想・評価

ハンターキラー 潜航せよ(2018年製作の映画)
3.0
長かった。潜水艦は興味があってノンフィクション本など集めてましたがリアリズムナッシング。

・ああいうメダルはある。あとSSN-800がアーカンソーなのも現実通り。
・米海軍の原潜艦長(本作では中佐)は原子力工学者である事が求められる。兵士からのたたき上げだとしてもずっと潜水艦勤務はまずない。艦、学校、地上勤務のローテーションになったはず。あと作戦中にこれだけ原子炉に気遣わない艦長って米海軍原子力潜水艦マフィアでは考えられない。気遣いながら作戦遂行できる原子炉管理者のプロが艦長になる。そういう世界のはずですがねえ。
・XO(副長。少佐)、COB(潜水艦最先任下士官。Master Chief Petty Officer )ぐらいしか区別のつかない海軍ものも珍しい。
・潜水艦が魚雷攻撃を受けると分かったら速やかに水密ドアの閉鎖を命じるはず。ロサンゼルス級潜水艦、そういう描写が一切ない。ともかく潜航中での作戦がとても杜撰。
・艦体が水圧で凹んだら圧壊まで一直線では。いずれにせよ400mぐらいは潜れるはずなのであり得ない。
・潜水艦はメインタンク注水で中性浮力にして潜舵で深度を変える。潜航時は一旦潜望鏡深度で漏水などないかチェックするし、また潜航開始時だけ使うネガティブタンクに注排水も必要。まあ、そういう描写は一切ないですね。
・潜水艦の動向を本国司令部が知ることは難しい。本国側はELF通信で海中でも受信可能な長周波の電波で潜水艦の呼び出しは出来る。但し恐ろしくビットレートが低いので緊急呼び出し用に限られる。潜水艦は潜望鏡深度でアンテナマストを突き出して衛星バースト通信で命令や報告の送受信を行う。潜水艦喪失は潜水艦が定時連絡を怠った時に初めて疑いを持ち始める事が多い。なお海中に固定マイクロフォンを敷設してという対潜水艦警戒網を米海軍は設けていたけど冷戦後も維持しているかは聞かない。この他にソナーアレイ曳航による哨戒を行う専用船も運用されていて爆発音があれば探知する事はありえる。実際南米で消息を絶った潜水艦は爆発音がソナーで探知されている。
・アーカンソーは非貫通式潜望鏡のため発令所内にありがちな潜望鏡の菅は存在しない。もっとも潜望鏡の電子カメラを使うシーン自体ないので観客は意識しようがないか。ロサンゼルス級は貫通型潜望鏡なので発令所にあるはずですがソナーマン達のシーンメインでうまくごまかしている。
・ソナーマンがヘッドホンというのは現代戦では果たしてそうなってるか疑問。音をデジタル解析してスクリューの数や回転数から相手を識別するようになっているし大きな爆発音がしてもカットされると思うんですが。
・行きの機雷原、帰りはなし?

よかったのは鹿のハンティングと駆逐艦との死闘そして浮上後にじっと待った艦長の心理ぐらいですかね。ただもう少し駆逐艦側に積極的理由描写はあってよかったはず。プロットが雑過ぎるんですよ。