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アメリカン・ソルジャーのjonajonaのレビュー・感想・評価

アメリカン・ソルジャー(2017年製作の映画)
3.9
とても静かで言ってしまえば地味な映画だけど、戦争帰還兵の苦悩を非常に丁寧に描いた秀作。

戦場でどれだけ酷い目に遭って帰ってきても、それがいかに個人的につらい経験であっても、有象無象の帰還兵の中なんらかの基準によって順番待ちを余儀なくされる。まともなカウンセリングまでには半年。家族からはあなたは闘った軍人なのだから、本国でも立派な仕事に就くべきよと諭される。が、仕事がない。メンタルも保てない。気晴らしに出かけたら車のサイドミラーにはイラクの土煙が立ち込める。幻影である。
視覚、聴覚に戦争が仲間の肉がこびりついてる、という感覚を映画的に上手く伝えてくれるので、非常に主人公のおかれてる窮地が困難かつ人に伝わりづらいモノだと分かる。
奥さんが素晴らしい人だ。本作でも描かれるがよく戦争帰還兵が戻ると妻が姿を消していた。友人と浮気していた。そんな事が実際すごく多いらしい。そんなの地獄じゃないかと思う。この主人公の奥さんの旦那を支える行動は、全く当たり前のものではなくて、とても貴重で真の愛がなけりゃできない献身だと思う。
それでも解決するのは自分なのだ。
いい映画でした。

以下、ネタバレあり
○いいとこ
・PTSDを抱える主人公の目線で見る幻覚・幻聴描写。サイドミラー越しにイラクの煙。負傷させてしまった仲間の亡霊がショッピングモールで自分めがけて歩いてくる。セックス中ベッドが軋む音が銃声に聞こえる(この描写はスピルバーグ『ミュンヘン』でも見られたので結構よくある事なんでしょう)友人と狩りに出かけると、暗視ゴーグルに居ないはずの人影が映り、自分に銃を構える。

・夫婦の愛情
カウンセリングに2人で言って、少し元気になって旦那が妻に『そうだった。昔は、よくそんな風に君を笑わせた』と呟き、妻が笑いつつ涙を流すシーンはこの映画の白眉。

・旦那の友人の帰還兵2人が悲しい。特に彼女さんが出てっちゃった方は…
たかが彼女、と思うけどそれを支えに戦場で頑張ってたのならあれは地獄。
もう1人も一見まともだけど、銃撃の後遺症でワンフレーズ前の会話を忘れてたりと、中々の衝撃。

・アメリカ帰還兵の
おかれる現状が知れる。

○よくない
・少し地味…まぁ、アクションが不要な話なので問題ない。

・旦那の友人の帰還兵にも何かいい終わりがなかったものか…泣
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