しゃりあ

劇場版 フリクリ オルタナのしゃりあのレビュー・感想・評価

劇場版 フリクリ オルタナ(2018年製作の映画)
1.0









ネタバレガンガン有りで投稿しますが、ネタバレ踏みたくない人が悲惨な目に合うのが悲しいので、あえてこのまま投稿します。続きを読むから読んでください。


どうでもいいけど、僕より前にレビュー書いてる人のほとんどがプログレの試写会観たのを間違えてオルタナに書いてますよね?オルタナは井出くん出てきませんよ!お気をつけて〜















OVA6話を一気見するような形式を取っているのは、プログレと同じです。

やはり無印のファンが根強い作品なだけあり、それだけ期待値も求められるハードルも高い続編でしょう。

かくいう僕も無印の熱烈な信者です。そんな僕らが求めるものは、どれだけ無印の"フリクリ"らしさを継承し、そしてそれを超える正統続編を見せてくれるのかというところにあると思います。
製作者たちの「フリクリのここが好きなんだ」という想い、そして、「2018年のフリクリとはこうなんだ」という今を生きる私たちの熱量を見たい。そういった気持ちで、この「オルタナ・プログレ」を観に来るのではないでしょうか?

トレーラーでハルコがどれだけ変なことを言ってても、それでも原作ファンだから、観に来てしまう。
もしかしたら、「テン年代のフリクリ」を、「フリクリを観て感動した僕らが観たい続編」を、観れるんじゃないか?
そう淡い希望を抱いて1800円を払い劇場に足を運ぶんでしょう。

このフリクリオルタナは、そういった祈りにも似た僕らの想いを、見事木っ端微塵に粉砕してくれます。

前代未聞の気温、未曾有の大洪水、関西の大風、昨晩の大地震、フリクリオルタナのクソっぷり。2018年の夏は災厄続きです。

「"フリクリ"だからめんどくさいオタクが集まって、アンチ化してんだろ懐古厨どもが」
そう感じる方もいるかもしれません。しかし、この『オルタナ』はそんな生易しいものではありませんでした。
『フリクリ』の看板を外したとしても、普通につまらん映画です。

何がそんなにクソなのか。
映画が始まって数分間、○rangeをさらに薄くした少女マンガ原作アニメを観ているのかと思いました。
間延びしたセリフ、眠くなるテンポ、ギャグなのかもわからんギャグ、女子高生以上のキャラクターが立っていない主人公たち。
クレしんのハズレ年映画、トイレを催してもなんら焦らないで御手洗いに立てる雰囲気と言ったら伝わりやすいでしょうか?

無印にあったような、僕らを搦めとる不安やもどかしさ、欺瞞は、すべて具体的な人間関係の問題にカテゴライズされていきます。

アクセサリーのように他人を扱う大学生の彼氏とモデル卵の女子高生の恋愛イザコザ(背伸びしたいお年頃・上っ面の人間関係)

夢に向かって隠れて頑張るデブとそれを応援する友達(成功・努力・夢・おせっかい)

好きな男子をハルコに取られる?と思ってモヤモヤする(嫉妬・本当の気持ち)

金持ちの友人が自分だけ火星に移住する(言えなかった黒い気持ちの吐露・裏切り・仲直り・別離)

こんな感じだったと思います。カッコ内は描いている、つか描きたかったであろうテーマや感情です。

本当にただ使い古されたクリシェの繰り返しムービーでしかない。しかも、それが予想の範疇を超えることがない。
ハルコは17歳を諭す教師のようなポジションで現れますが、初めのクソ男子大学生をギターでぶん殴るなど、観客のストレスの解消みたいな浅いことを繰り返し、意味深で含蓄あるだろみたいな発言をただ繰り返すのみの説教キャラとしてしか存在していません。

これだけで本当に椅子に座っているのが苦痛なのですが、5話くらいからやっと物語が動き出し、フリクリのSF側面が見え出しても、なんら見所はありません。

メディカルメカニカのプラントがまったくよく分からんタイミングで起動し、能天気でつまらなくて消費的なだけの、マミミがいじめられていても別に楽しくやってそうなクラスメイト、そんな主人公の女子高生たちが送る"日常"が破壊されていく。
終わりゆく世界の儚さみたいなものはプログレの方が上手いと思います。というかオルタナには何もない。

多数のカンチモドキと戦闘シーンで、ハルコが主人公に檄を飛ばす。セリフを全く覚えていませんが、とにかくなんか言うと、主人公のN.O.(なのか?)が発動するのですが、ここがマジで酷かった。
主人公の髪の毛がオレンジ色に変わり、トップ2のノノ、バスターマシン7号みたいになるんですね。お前はトップ2も踏みにじるのかと、僕はキレかけましたよ。

ノノと同じようにマイクロブラックホールを生成し、メディカルメカニカプラントを吸い込む主人公。
それを見るアマラオポジのようけわからんおっさん。
「エキゾチック反応だ!」
「反重力反応だ!」
「事象の地平線だ!」
マジでこれしか言いません。

ガイナの長ったらしいSFファン歓喜の設定口調はどこへ?
新劇のサードインパクトオマージュ(というかパロディ)が2,3分の雑な感じで行われ、流石に僕は泣いてしまいました。

とりあえずなんか青春っていいよね!みたいな感じで〆。許したけど、許せないどす黒い人間の感情とか、そういった踏み込んだことはマジで1ミリたりとも描写しないまま、映画は終わります。

宇野常寛とかがセカイ系を批判した時に言ってたような、挫折したオタクの救済みたいな、そういうものですらない。そういう作家性すら皆無だと思いますマジで。
クリシェ以上でも以下でもない。声優の練習用台本とか、そんくらいで全てのセリフが右から左へ抜けていく。

ストーリー面だけで酷いなら、それはそれでいいのかもしれません。
ノリとフリクリの無印の「よくわからなさ」(巷ではよく言われますが、個人的には、は?よくわかるだろボケとしか思えない)を求めて来ているライト層には、演出とかがよく出来てれば良かったと思います。その点、プログレはフリクリらしいテンポが復活する場面もあるので、それはまだ安心していいと思います。

しかし、オルタナはプログレに輪をかけて酷い。


まずthe pillowsの楽曲の使い方が酷い。
よく、フリクリは「ピロウズのMVだ」と揶揄されることがあります。これは信者内でも褒め言葉だったり貶し言葉だったり、意見が分かれるところではありますが、ひとまずそう言われる所以として、あの曲と完全にマッチした演出が挙げられると思います。
その無印の恐ろしいまでに緻密に計算された曲との融和性が、オルタナには全く見られません。
マジでピロウズのアルバム流しつつ、ゴミアニメ作業用に流してる気分になるくらいにタイミングが合ってない。
不思議なタイミングで曲の終わりが来て、不思議な音量で流れるため、フラストレーションが溜まること間違いなし。

ていうかスケアクロウとか無印公開以降もめちゃくちゃ名曲あるんだから使えよ。てか脚本家は曲の歌詞をちゃんと読んで聴いたことがあるのか?

ストーリーもまるで盛り上がらないので、「I think I can」や「last dinosaur」が流れたタイミングで、「あっ、これ制作側は今盛り上がりどころだと思って流してるんだ!」と気づかされるような新しいアニメ体験ができます。
前例があるからこそ、気づけるというのは本当にすごい。無印のすごさを思い知らされますね。
プログレはまだ、監督によってはタイミング良いところもあって、コレコレ〜という気分にさせてくれましたが、オルタナはマジで一箇所もない。
すごい本当に。

パロディネタも本当に酷い。スラムダンクやセーラームーン、トランスフォーマー、スターウォーズ、マッドマックス怒りのデスロードなど、まぁ色々ありましたが、その全てのチョイスにセンスがない。
お前本当にミーハーなんだな、いやミーハーなのは悪いことじゃないけど、本当にセンスのない方のミーハーなんだなというのがめちゃくちゃに伝わってきて、僕はもう

初めにオルタナ観た人は本当に可哀想です。オルタナの虚無感がプログレ1〜4話のほとんどに流れていますが、まだマシです。
オルタナは完膚なきまでに褒めるところがない。
この出来で、オルタナ褒めてる人とは本当に友達になりたくありません。

この映画以外で、こんなに無音のタイミングで溜息だとか「はぁ〜……最悪だよ……」と言った声が聞こえる映画を観に行ったことがありません。

フリクリ無印OVAファンの人、ウエダハジメ版ファンの人、榎戸小説版ファンの人、どうしても観たいならプログレだけ観にいきましょう。

オルタナ行くくらいなら、被災地に募金してください。以上。


あっ、でも怒号罵倒上映やるんだったら観たいです!!!