イチロヲ

イナゴの日のイチロヲのレビュー・感想・評価

イナゴの日(1975年製作の映画)
4.5
パラマウント映画のスタジオにて裏方業務に従事している青年が、激情型の上昇志向をもつエキストラ女優との交流を通して、業界の暗部を知らされていく。パラマウント・スタジオ界隈の人間模様を描いている、サスペンス・ドラマ。

端的に言うと、1930年代後半のハリウッド界に特化した、敗北者の物語。アメリカン・ニューシネマの系統を、映画業界内に持ち込んだような語り口になっている。決してスキャンダル性重視の暴露話というわけではない。

デザイナーをしている聡明な青年とスタジオの会計係をしている敬虔なキリスト教徒の青年、そして大スターになることを夢見ている高飛車なエキストラ女優が中心人物。ハリウッドの幻想に狂わされて、人間的情緒が破綻している人々の交流劇が繰り広げられる。

中盤部の間延び感が半端ないけれども、迷走と混沌が地続きになっていくため、その居心地の悪さに浸ることが可能。極めて露悪的なハリウッド批判に徹底しており、「後に引きずる映画」として高い完成度を誇っている。
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