シズヲ

トップガン マーヴェリックのシズヲのレビュー・感想・評価

4.3
マーヴェリック、36年ぶりの帰還。冒頭で満を持して流れる『Danger zone』の高揚感、率直だけどやっぱりブチ上がるので味わい深い。初代『トップガン』に望んでいたことがだいたい詰まってる秀逸な続編。初代に関しては「トップガン内のドラマに焦点を当てるべき内容なのに何故か女教官とのロマンスにウェイトを置いてる」という部分がどうしても引っかかって、個人的に正直そんなに好きではなかった。

対して本作は一貫した目標を下地にしつつ、「初代なら連なるマーヴェリックの過去の清算(=亡き親友の忘れ形見との対峙)」に熱量を込めているので軸足がブレていない。尚かつ前作では半ば本筋を妨げていたロマンス要素も、あくまでマーヴェリックを掘り下げる為のアクセントに徹している。諸々の改善点に加えて前作のドラマ部分を適切に引き継いでいるおかげで、作中の展開や感情へとしっかり乗り切れるようになっている。

冒頭から示されるマーヴェリックの健在ぶりはやはり嬉しくて、最早ロートルには見えないトム・クルーズの活力も含めて安心感すらある。出だしからあのG-1フライトジャケットを引っ張り出してくれるのも大興奮。パイロットとしても変わらず卓越した技量を披露してくれるので爽快感が凄い。重要な場面で登場してマーヴェリックの背中を押すアイスマン=ヴァル・キルマーにも感激してしまう。前述の通りジェニファー・コネリー演じるヒロインとのロマンスも適度なアクセントになっている(ケリー・マクギリスはどうした?感は否めないけど……)。ドッグファイトは相変わらずダイナミックで疲れる部分はあるとはいえ迫力自体はやはり凄まじく、CGなど撮影技術の発達によって前作よりのめり込みやすくなってる感。そして映画館の大音響と激しいジェットエンジン音などの相性がとても良くて、強烈な臨場感を味わえる。

本作の骨子となる新生トップガン達との関係性は、マーヴェリックが“教官”として立つことも含めて初代からの時の流れを否応なしに感じさせられる。若手達が朝鮮戦争と冷戦を混同する場面がしれっと印象的。新生トップガン達のキャラ立ちは主要な数名に集中してる感はあるとはいえ、マーヴェリックとの交流も含めてちゃんとチーム単位での愛着は湧くのでドラマ的には十分。訓練のシーンや終盤の無茶な展開も含めてざっくりした部分は否めないが、本作自体が娯楽作に徹しているのとトム・クルーズの役者としての属性によってすんなり受け入れてしまう。

そして前作で散っていった相棒との関係性に焦点を当て、その息子との確執や和解によって“前作のドラマ”を改めて清算しているのが良い。『火の玉ロック』の演奏で父親とリンクさせる瞬間、とても好き。アイスマンとの友情もそうだけど、前作で活かしきれていなかった部分を続編として昇華しているのが嬉しい。溜めに溜めて幕を開けた困難なミッションを超えてから更なる試練が立ちはだかる緊張感に加え、そこでマーヴェリックとルースターの共闘による“思わぬ出撃”を描いてくれるのが味わい深い。いつも憎まれ口を叩いてたハングマン、最後の最後に友情フォーエヴァーだぜ。
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