サマセット7

トップガン マーヴェリックのサマセット7のレビュー・感想・評価

4.8
1986年公開の「トップガン」の続編。
監督は「オブリビオン」「オンリーザブレイブ」のジョセフ・コシンスキー。
主演は前作に続き「コラテラル」「ミッション:インポッシブル」シリーズのトム・クルーズ。

[あらすじ]
戦闘機パイロットの中でもエリート中のエリートを育成する航空戦学校、通称トップガンに、教官として、ピート・ミッチェル大佐、コールサイン"マーヴェリック"(トム・クルーズ)が帰ってきた!!
彼が指導するのは、ならず者国家の核施設を攻撃する超高難度の特殊作戦に従事するため集結した、若きエリートパイロットたち!!!
メンバーの中には、かつて訓練中に事故で亡くなった親友"グース"の息子"ルースター"(マイルズ・テラー)も含まれていて…。

[情報]
トム・クルーズをトップスターに押し上げた1986年公開の戦闘機アクション映画「トップガン」の36年ぶりの続編。

前作に思い入れのあったトム・クルーズは続編製作権を買い取り、来るべき時まで企画を温め続けた。
前作監督トニー・スコット、前作製作ジェリー・ブラッカイマー続投の方向で企画が立ち上がったものの、トニー・スコットは2012年に急死。
しかし、トム・クルーズの高い意欲に後押しされ、企画は潰れず、監督に「トロン・レガシー」のジョセフ・コシンスキーを招聘し、コロナ禍での上映延期などもありつつ、ついに2022年公開となった。

前作に引き続き、今作の戦闘機の飛行シーンは、CGではなく、ほぼ実機が使用されている。
撮影は、戦闘機にカメラを設置して、空撮するという驚愕の方法で行われた。
操縦こそ実際のアメリカ海軍のパイロットが行なっているものの、キャストは実際に加圧に耐えるための本格的トレーニングを積み、実際に飛行する本物の戦闘機に乗り込んで、コクピットにIMAXカメラを搭載して撮影が行われたという。
クレイジー!!!

前作からは、回想シーン以外ではトム以外には、"アイスマン"を演じたヴァル・キルマーが同役で続投している。
前作を彷彿とさせるシーンが多く、前作を視聴した方がより楽しめると思われる。

今作は、公開4日目だが、批評家、一般層問わず、絶賛を受けている。
具体的には、IMDB、Rotten tomatoes、Filmarksなどの批評サイトでいずれも今年最高クラスの高評価を叩き出している。
すでに3日間で北米で1億2400万ドルを稼いでおり、初動成績としてはトム・クルーズ出演作史上最高の成績である。

[見どころ]
全て。
音楽、若き肉体、実機の飛行アクション、疾走するバイク、恋愛など、ランダムに配置されていた前作の要素を綺麗に掬い上げ、完璧な構成にまとめ上げた見事な脚本。
エモーショナルな人間ドラマ。
現代の最新技術で撮影された「本物」の戦闘機の「リアル」な飛行映像。
前作に続き力の入ったサウンドトラック。
スクリーンに刻み込まれた、トム・クルーズという不世出のスターの生き様そのもの!!!

[感想]
考える前に観ろ!!!

派手なサウンドトラックや実機アクションがところどころ輝きを放つ、いかにも80年代なアクション映画だった前作から36年。

若手イケメン俳優だったトム・クルーズは、並ぶ者のない、狂気のスタントに挑む異形のアクション・スターとなった。

そんなトムの59歳にして公開される今作は、まさしく、限界突破の作品である。

今作のシナリオは、超難度のミッションクリアを目標に、トムが若者たちを指導し訓練させ、最後にはそのミッションに挑ませる、というもの。
この死と隣り合わせの「ミッション」という軸がシナリオ上明確になったことで、訓練シーン、恋愛シーン、人間ドラマに前作になかった緊迫感が加わった。

前作の引用や目配せは、ストーリーの必然性と完全に一致しており、感慨を覚えるが、ノイズにはならない、という完璧なバランス。
その結果、前作で、このシーン、必要あるか?と思っていたシーンが、今作で改めて美しい思い出として補完されたりする。
「続編」として、今作ほど見事な出来栄えの作品は記憶にない。

そんな今作で描かれるドラマは、マーヴェリックとルースターの擬似的な父子関係をメインとしている。
これまた、前作の出来事を上手く活用して、実にエモい。

相変わらず戦争の悲壮さは欠片もなく、まるで高難度の危険なアスレチックコースに挑むようなスポーツ感覚は前作譲り。
ただ、ミッションの見せ方や3Dを使った説明が圧倒的に分かりやすいため、前作よりも遥かに没入し易い。

些か荒唐無稽な部分もあるが、そこはトム・クルーズのスター性によって、納得させられてしまう。

トム以外のキャストも、ルースター、ハングマン、フェニックス、ボブと、いずれも個性的かつ魅力的だ。
コールサインで誰が誰かわかり易いのもいい。

それにしても、製作経緯を知るにつけ、トム・クルーズという俳優の真摯な姿勢には感嘆するしかない。
彼と同じ時代に生まれたことに、世の全ての人々は感謝すべきだろう。

[テーマ考]
戦闘機において、無人機が主役の座を担わんとする時代が到来しつつある。
そんな中、レジェンド的な戦闘機乗りのマーヴェリックは、有人飛行の最後の砦のような存在だ。

こうしたマーヴェリックの立ち位置は、CGの隆盛や配信作品の広がり、コロナ禍などで転換期にある映画業界において、生身のスタントと劇場公開に拘り続けるトムの立ち位置と重なる。

そんなマーヴェリックが、かつての親友の息子や、若きパイロットたちに示す姿とは。

それこそが、今作のテーマだろう。
時代は変わる。
それでも、変わらないものは確かにあるのだ。

[まとめ]
伝説的戦闘機アクションの36年ぶりの続編にして、不世出のアクション・スター、トム・クルーズの出演作史上、最高傑作。

劇場では、ミッション:インポッシブルの続編の予告も流れていた。
今年はトムの還暦の年だが、まだまだ伝説は続きそうだ。