よしまる

トップガン マーヴェリックのよしまるのレビュー・感想・評価

4.8
 これは一体どうしたことだろう。

 高校から大学にかけて、劇場やレンタルビデオで繰り返し観た映画。

 内容なんて何もなく、夜中にバイトの先輩の部屋に行ってひたすらに呑みまくりながら画面に流れていた記憶。
 「日本じゃノーヘルで走れないんだよぉ〜」と、MA1ジャケを着た先輩が舌打ちする。琵琶湖へ泳ぎに行くとラジカセを大音量にしてビーチバレーをさせられる。

 けれどもボクは汗とオーラでキラキラしたトップガンたちを真似るパイセンたちを一歩引いて眺めるオタク野郎で、呑んでバカ騒ぎしているみんなを横目にトムキャットのヴェイパーやアフターバーナーを食い入るように見つめていた。

 ついでに言うとトムクルーズもすっかり劇場案件からは外れていて、MI3以降の出演作はどれもビデオでしか観たことがない。だから、今さらトップガンなんて言われても別にわざわざ行かんでしょと、ずっと思っていた。

 が。劇場の予告編でハロルドフォルターメイヤーの名曲「TOP GUN ANTHEM」のメロディが流れた時、あれ?何この感情?ココロが震えてない??

 そうだった、この映画、あってないようなストーリー、音楽流しときゃ絵になるだろうってな継ぎはぎなプロット、ヒーローとはほど遠いカッコばかりの主人公、そして取ってつけたようなラブロマンス、何一つ褒めるところのない、あるのはただ実機を活かしたドッグファイトのみというシロモノだったはず。

 でも、それが好きだった。何度観ても飽きない、役者たちの楽しそうな演技や、海軍が本気出した映像、そのクオリティはいま見ても色褪せてないはずだ。
 松本零士や新谷かおるの漫画ばっかり読んで空想に耽ってた自分にとって、トムクルーズみたいな勝ち組になれなくても、友達や彼女はそのとき本当に大切なものだったし、それは実生活にはなんの影響もないようでいて、心のどこかにちゃんと息づいていた。映画って、そういうもんだよね。

 トップガンマーヴェリックは、ジェリーブラッカイマーとトムクルーズが、長い年月をかけて実現した補完の物語。やるならコレしかないというテーマで、その無茶苦茶ぶりを承知の上で詰め込んだ傑作になった。

 前監督トニースコットの自殺、ヴァルキルマーが声を失うというアクシデントを乗り越えてまで結実させた2人には感謝しかない。何よりこの映画には前作に希薄だった「熱量」がある。

 オープニングが完コピだったのは衝撃。
あれ、間違って観にきちゃった?とさえ思ったw
 しかしオマージュとはこういうものだ!という宣言と思えば秒で納得して入り込んでしまった。いやお見事すぎる。同じ監督なら絶対やらなかっただろう。

 表面だけをすくい上げた続編やリメイクが多い中、小ネタを拾い、人間を深堀りし、映像をブラッシュアップする。そのどれもが、観るもののココロをガッツリと掴んで離さず、揺さぶり続ける。しかも上映中、ずっと。こんなことってあるんだね。

 減点要素がないわけではない。仮想敵国のリアリティの無さ、特にスターウォーズ的ミッション終了後に訪れるミッションインポッシブル的展開には失笑を禁じ得ないが、実はそこはまったく気にならないどころか、むしろ高評価としたいくらい。
 前作のトムクルーズは考えようによっては魅力のないお飾り主人公だったけれど、それを払拭するだけの活躍を内面とアクションの両方で見せてくれているから凄い。

 それよりもジェニファーコネリーだ。
 80年代のシンボルであることがもうほんとに絶妙なギリギリラインで保っている。他の知らない人なら即アウトww
 前作で2度セリフに登場した元カノという設定(そんなん知らんがなレベル)を拾っているので破綻こそしてないけれど、登場の仕方と作品での比重を考えると最後まで唐突感は拭えなかった。ロマンス必要だったかなあ、いや、でも無きゃトム映画じゃなくなるよなぁ、あの目、だよなぁ。ヨットのシーンも良かったなー。でもやっぱりお前誰やねん…
 と、ここだけが唯一の引っかかりポイントなまま。
 贅沢を言えばケリーマグギリスはともかく、メグライアンが出てくれたらさらに加点で満点だったw

 結局、いったい何度涙ぐんでしまったかわからないくらいに入り込んでいた。どうしたことだろうと客観視している自分も居るのに、なお映画は掴んだココロを離してはくれなかった。
 10代の頃の甘酸っぱい気持ちと、大人になった自分と、1秒と変わらず同じ時間を経てきたトムクルーズほかの作り手たちが過ごした時空が邂逅したのかもしれない。
 彼らもまた時々大空を眺めては想いを馳せ、この時のために何かを成してきた、そんな気がしてしまう。だから、ありがとうだ。

 本来続編というのはそういうものであるべきで、この先に作られる続編ものやリメイク映画に立ちはだかるハードルは高くなるだろう。それはとても素晴らしいことなのかもしれない。

 ファイヤーフォックスやライトスタッフ要素も多かったし、昔エリア88やファントム無頼にハマった男の子たち、映画って楽しい!ていう純粋なココロが残っていれば、きっとわしづかみにされてぎゅーってなるに違いない。

 4DXでもう一回観に行こう。これから観る方は可能な限りIMAX推奨。家に100インチでもない限り、配信待ちなんてとんでもないよ😜