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トップガン マーヴェリックのpenのネタバレレビュー・内容・結末

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このレビューはネタバレを含みます

思わずマーベリックをトム・クルーズという役者個人(これまで様々な映画の中で驚異的なアクションに挑んできた存在として)と重ねて観てしまいがちな映画だった。
特に冒頭。私物の年代物のジェット機を日々メンテナンスしながら、新開発の機体(自動操縦、AIにより制御されたものではなく、自らがコントロールするもの)に乗り込み、限界を超えようとする姿は、トム・クルーズの信念をマーベリックに置き換えたものではと勘繰ってしまう。
時代を受け入れた存在としてのエド・ハリスと、順応と逆行の二律背反を成立させようとするトム・クルーズとの会話は、僅かなシークエンスながら贅沢な時間。

前作で命を落とした盟友グースの息子ルースターが出るとなれば、やはりマーベリックとの関係が中心になるのを期待する。実際それは過不足なく描かれていると思うが、思わぬ伏兵としてのハングマンが意外。ニヤケ顔が悪い意味で印象に残る前半が鮮やかにひっくり返る終盤。彼もまた信念を持つパイロットの一人。振り返ればアイスマンだって、別に性格の悪いライバルという訳ではなかった。ただ冷静に物事を見ようとし、結果的に対立的な立場にいたように見えただけで。つまり時代を超えても変わらない絆の芽生え方が本作にはあった……気がする。

撮影や編集からはロマンスよりもシミュレーション映像、計器類、乗り物の艶やかさに拘りを感じる。夕陽を背景に影になる砂浜の訓練生達よりも、暗がりの部屋で立つマーベリックの陰影が印象深い。彼の抱える迷いと老いがシンクロしていくような感覚。アイスマンとの再会といい、時間の流れは隠さない。だからこそクライマックスの非現実めいたものも夢として見られたように思う。
そもそも今回の敵のあまりの不透明さといい、割り切れるものはとことん割り切って省略しているのが少しおかしい。
そしてそのミッションは明らかにスター・ウォーズのデススター攻略戦だ。

いい夢を観られたと思えた1作。
トム・クルーズはこれとミッション・インポッシブルで地上でやり残したことを終えて本物の宇宙に行きそうな気がしてきた(そうとしか思えない「ここはどこだ?」「地球だよ」のやり取り。彼は旅立つのではなかろうか)。
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