takato

トップガン マーヴェリックのtakatoのレビュー・感想・評価

4.3
 正直全く食指の動かない、もはやお馴染みになったオジサン向け「80年代回顧懐かし作品」でしょう…、そんな風に考えていた時期が私にもありましたな評判通りの傑作でした。


 正直ストーリーもキャラも、況してやテーマもそれほど凄い点はない作品に私は思います。シンプルで王道ともいえるが、それほどキャラを見事に描きこまれているわけでも、上手く溜めを爆発させられているストーリーでもない。それなのに何故本作を傑作と評するのか?。それは偏に本作の持っている絵の力が圧倒的だったからです。私には、本作は「紅の豚」あたりまでの宮崎駿作品を連想させられました。


 ベタなほどシンプルなストーリー、受け入れやすいがありがちなキャラ。これだけなら下手な人がやったら凡庸な作品になってしまうでしょうが、圧倒的な宮崎さんの表現力あるからこそベタではなく王道に、ありがちではなく深味すら感じさせられてしまうのです。冷静に考えるとありえない展開や描写すら、むしろ魅力として光り輝きすらしてしまう。


 それこそが絵の力、絵の表現力。単に綺麗な絵でも、技術的に凄いというような感心のレベルに終わらない感動の域まで達した力。本作も絵の力がとにかく生理的な快感と、ストーリーにもキャラにも説得力を与えてくれたのが最大の勝因だと思います。勿論旧作メンバーが積み重ねてきた時の流れの重さとかもありますが、とにかく特筆大書すべきは映像につきると思います。CG全般時代を経て、フレッシュな映像表現にはもう出会えないような想いも感じていましたが、まだまだ可能性はあんじゃん!と本作には目を開かされる想いでした。


 個人的にはとにかくウォーロックさんが断トツに良くて、最後思わずグッときてしまったのも彼の表情が最大のポイントだったりもしましたが、あれが良かったここが良かった話は他の人もしてると思うので、私としてはそれは書く必要はないと思います。そこで、私が本作を傑作と思ったけど、「大」傑作だとは思わなかった理由を書きます。


 これは宮崎駿作品と共通する点なのですが(思い出の作品過ぎるラピュタは除く)、好きなんだけど自分にとって大切な作品かというとそうでもない…。やはり我が事のように思えるテーマ性なり、リアルタイムな同時代性なりがないと本当に胸を打たれることはないのではないでしょうか?。


 「カリオストロ」と「未来少年コナン」とかかなり好きで見終わった後の爽やかな気持ちも本作に通ずると思いますが、人生の一本ではない。コンテンツに対して一時の上質なエンタメで満足な人には本作は充分だと思います。しかし、私はもっとコンテンツに対して期待している、より欲も業も深いオタクなので、上質なエンタメからはみ出して己に食い込んでくるサムシングがないと真に満足することはないのです。



 高橋ヨシキさんが評されていましたが、本作は「みんなが飢えていた丁度良い感じの娯楽作品」ということに尽きるのではないでしょうか。
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