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トップガン マーヴェリックのレントのレビュー・感想・評価

5.0
最後のミッション、それは隊員全員を生還させること。

燦然と輝く経歴を持ちながらも出世には一切興味がなく、徹底的な現場主義。軍上層部にとっては頭痛の種だった命令違反常習者のミッチェル。
そんな彼が古巣に戻り課せられた任務、それは生還率ゼロパーセントのあまりに危険な任務だった。
敵の地対空ミサイル、レーダー網をくぐり抜け低空飛行で渓谷をぬけて目標に到達し、ピンポイント爆撃を成功させた後、10Gを超える急上昇で離脱、その後もミサイル攻撃をかわせなければ生きて帰れない、まさにデススター攻略作戦に匹敵する、フォースが必要とされる危険なミッションだった。
軍は端から爆撃のみを重視し、犠牲が出るのは覚悟の上だった。しかし教官として召喚されたミッチェルはこの困難なミッションを実現し、隊員全員を生還させるために彼らを鍛え上げようとする。
果たして彼はこの不可能なミッションを可能ならしめ、そして隊員の一人である親友の息子との確執を解消する事ができるであろうか。

前評判通り、俳優が実際に戦闘機に搭乗して撮影に臨んだだけにその映像の臨場感は凄まじい。CGではけして表現できない圧倒的迫力ある映像。まさにGを体感する映像体験と言える。鑑賞後、席から立つとき足元がふらついたほどだった。
また、映像だけではなく物語も実に巧みで、ミッションに至るまでの盛り上げ方も見事だし、前作の設定を伏線としてフルに活用。大人が見ても充分満足できる娯楽作品に仕上げている。いや、満足どころかもはやお腹いっぱい。ここまでやってもらってはけちのつけようもない。

一部には敵基地先制攻撃を肯定するような内容との批判もあるが、現実とフィクションの区別も出来てないお門違いな批評と言えるだろう。そもそも本シリーズは製作者いわく戦争映画でなくスポーツ映画とのこと。本作をその点で批判することはデススターが惑星破壊光線を発射する前に反乱軍がデススターを破壊することはどうなんだといううくらい陳腐なことだと言っておこう。

実際にガンで声を失ったヴァル・キルマーをそのままの役どころで出演させるあたりなど作り手の本気度もうかがえる。

本作はいかに映画ファンを楽しませるかに特化した、そしてその方法を熟知したハリウッドで長年トップに居続け、キャリアを積み重ねてきたトム・クルーズのなせた技であったと言えるだろう。

正直、前作は戦闘機のカッコよさと美男美女が売りのそれだけの映画だった。訓練中に親友を失い、失意の主人公が作品ラストに予定調和で戦線復帰なんて娯楽作品特有のご都合主義に失笑したが、本作はその点も改善し丁寧に作り直している。
親友を失った悲しみ、そしてその忘れ形見である息子との確執、盟友との再会と別れ。まさにトム・クルーズが重ねてきた俳優人生の重みが反映されたかのように作品がブラッシュアップされていた。

本作は見るべき映画、というより見ないと損するレベルであることは間違いない。
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