ジェイコブ

トップガン マーヴェリックのジェイコブのネタバレレビュー・内容・結末

4.2

このレビューはネタバレを含みます

アメリカのエリートパイロット達で編成されたトップガンのエースパイロットとして、これまで数々の難関ミッションをこなしてきたマーヴェリックことピート。優秀な腕前に輝かしい功績がありながらも、問題行動の多さから上層部から睨まれていたことで、依然大佐から昇格できずにいた。ある日ピートは、人類史上最速のマッハ10に到達するテスト飛行を上の反対を押し切って強行し、その結果機体を一つ破壊してしまう。上層部はピートの問題行動を重く受け止め、彼を古巣であるトップガンへと異動させる。そこでピートに待っていたのは、危険かつ高難易度なミッションに挑む新人パイロット達の育成任務であった……。
トム・クルーズ主演、言わずと知れたパイロット映画の金字塔の続編。シーン冒頭のタイトルから始まり、映画観たことのない人であれば一度は聞いたことのある例のテーマソング、古き時代のアメリカを感じさせ、MA-1にF14戦闘機と、今が令和だと思わず忘れてしまいそうになるほど懐かしい場面の数々。それはリアルタイムで前作を観ていた人たちが涙するのも頷けるほどで、「時代の流れとともに失われる物は多いけれど、それでも人間にしか出来ないことはある」という本作のテーマを感じさせてくれる。
日本での大ヒットの最大の要因として考えられるのは、本作が近年のアメリカ映画には珍しいほど少年漫画の要素がふんだんに詰まった作品だからだろう。「友情・努力・勝利」と日本人が愛してやまない美徳と任務達成に向けて真っ直ぐに突き進むパワー、暑苦しいがそれでいて美しい汗と涙、閑話休題の水着シーン(笑)と、どれも観ていて愛しさが芽生えてくるシーンばかり。極めつけが分かりやすいほどの死亡フラグを突き立てるも、難なくへし折って見せるトム・クルーズの不死身さ。いやもう、逆にどうやったら死ぬんだこの人とすら思える(笑)
特筆すべきは、息を呑むほどの大迫力とはこのことと言わんばかりの後半にかけての空中戦である。1分一秒の遅れと一瞬の判断ミスが生死を分ける空中での戦闘シーンを描く事は、予算があればある程度のクオリティの物に仕上げられる地上戦の映画とは異なり、題材として取り上げるのが非常に難しいのは明白だ。それでも観客側も一緒になって手に汗握るシーンの数々を作り上げた製作陣には脱帽せざるを得ない。
本作は当初、無人兵器(ドローン)を操る若者達を中心とした物語であったというが、もし当初通りの予定で作られたとしたらここまでのヒットは望めなかっただろう。本作の大幅な方針変換には、還暦を迎えた今もなおスタントを自らこなす事に拘るトム・クルーズだからこその想いがあったのかもしれない。無人兵器の残忍性が世界中で取り沙汰される昨今、こうした泥臭さこそが人類の希望になるのではとすら感じさせてくれた。
ホラー映画ラッシュが一段落ついたので観に来たが、公開から3ヶ月弱たった現在でも大入りの観客なのも納得の作品。