春とヒコーキ土岡哲朗

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まっすぐシンプルにかっこいい映画。

キャラクターの変化を細かく描かなくてもいい。
トム・クルーズ演じるピート目線でずっと物語は進み、彼抜きでの若者たちだけの描写はほとんどない。だけど、各キャラクターの成長を全く違和感なく受け止められた。
もちろん、描いていないようでさりげなく葛藤を描くという演出力も発揮されているんだろう。でも、それ以上に、「このくらい変化の過程がなくても受け手にとっては問題ないんだな」というところに感心した。これくらいの描写でも十分キャラクターは作れるんだと思った。
描写が少なくてもそれができているのは、主人公ピートによる飛行の実演シーンがあるからだと思う。それまでピートと衝突していた登場人物も、ここまでの腕と精神力を持ったピートのことは、すごいと思わざるを得ない。そして、それを見せて自分たちに本気を伝えようとしてることに、心を閉ざしたり幼稚でいることをやめざるを得ない。その説得力がある。

昔のアメリカ映画のノリのままなのが良い。若者たちがバーではしゃいでいるところ、皆が筋肉を見せつけて砂浜で遊ぶシーンなど、アメリカ印ですがすがしい。前作を見ずに行ったがそれでも支障がないのは、過去の出来事もストレートである程度想像がつくところと、トム・クルーズが演じているのはすごいヤツという前提が成り立っているから。

戦闘機アクションのド直球な迫力。大事なところでやってくるフライトの場面。速く飛ぶ気持ちよさと危険が伝わり、命を背負う教官としての責任の重さも分かる。映像は豪快でありながら、飾り気のなさもある。風景もさっぱりした岩場。ファンタジーの映画だったら乗り物アクションでももっと要素をたくさん盛り込むが、「シンプルな戦闘機」を見せるのはニッチで、かえって個性的だった。