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サンキュー・スモーキングのKotaのレビュー・感想・評価

サンキュー・スモーキング(2006年製作の映画)
4.2
“誰にでも才能がある。僕は喋る事だ。”

クソ面白い。これはタバコのロビイストを切り取っただけで実は「情報による撹乱」と「自身の選択」についての映画。美しく理論武装されたセリフの数々と、カット割りのテンポ、それぞれのキャラの立ち方が満点。とにかくアーロン・エッカートがカッコ良くて好きになってしまう。クリストファー・ノーランはこの映画を観た後にアーロンに“ダークナイト”の役をオファーしている。

現代の私たちは自分達で考えるより世の中の情報に流されすぎている。「誰かが言っていたから」「ニュースになっていたから」という理由で情報を鵜呑みにする前にその情報のソースを確かめることを怠る。こと映画のテーマであるタバコについて言えば、確かに医学的に健康に良くない結果が出ているが、死者の統計を取ると“糖尿病”や“肥満”そして“交通事故”の方が圧倒的に多い。分煙や禁煙が進むことは多いに賛成であるけど、その意識を持つ人がなぜ“新しくできたバーガー屋”に並ぶのか、なぜ“スマホを見ながら歩行する“のか。

要は有り余る情報をどのように自分のなかで整理して落とし込むかってこと。その大切さを改めて教えてもらった。ハリウッド映画産業も盛大に皮肉られていたね(笑)。このテーマは今の(特に日本の)映画の興行や流行る作品へのアラートにもなっているんじゃないかな。周りの評価や宣伝文句だけじゃなくて、自分の中の意思を明確にし、それぞれが意見を発信して、映画というものがもっと多様で多角的なものになるといいなぁと思った。
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