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寝ても覚めてものCookieMonsterのレビュー・感想・評価

寝ても覚めても(2018年製作の映画)
3.3
昔運命的に好きあった男を忘れられずにいる女がまったく同じ顔の男に出会う

容姿が好きなのか、その人が好きなのか
過去に心を占めた相手が現れたとき、心はどう動くのか
自分を信じることができない相手と生き続けることはできるのか
これらはどちらかというと古典的で、男性を主体として語られてきたテーマなんだと思う
それらをまるっと逆転させて、ドライのようで、湿気のあるジメッとした、ホラーのような恋愛もののような物語に仕立て上げている

昔の男と女は実体のないふわふわとした繋がりで、好きになった動機はわからないけれど、それだけに衝動的で心に何かを残す
いまの男が女を好きになったきっかけもよくわからない
主要人物三人はみんなのっぺりしている
よくわからない、理由のない優しさだったり、好感だったり、を振り翳している
女はいまの男を好きになったのは昔の男の面影からだが、いまの男が女を好きなのもその容姿でしかないように見える
それくらい平板で、無個性で、感情に欠ける
みんな感情の温度がないのだ
だけど、好きとは違う、執着という、ちろちろとした残火みたいな温度だけがある
物語の筋は感情に突き動かされてるかに激しい筈なのに、とても理知的で極端な人物造形だ
何だか万田邦敏を思い出すような感じ
感情の籠らない台詞回しも下手というより意図的な演出で、わざと感情移入させない作りになっている

ラストシーンは川で、流れる歌はRiver
感情は濁流のように水嵩を増す
信じられない相手と暮らしていくことは多分そういうものだ
コントロールできない流れに身を任せることだ
その暮らしを考えたりすると、何がいいのかよくわからなくなる

兎に角ネコが可愛いかった
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