スポック

寝ても覚めてものスポックのレビュー・感想・評価

寝ても覚めても(2018年製作の映画)
5.0
人間以外の動物達にとっての異性を選ぶ基準はもっと直感的で、強くて魅力的な雄を雌が選ぶ事が多い。このような雄と雌との野生的な関係は人間の社会ではトラブルになる。
麦のように社会性も無く人柄も最低で自分勝手な男が、大衆や特に女性達に圧倒的に容姿を支持をされて、努力もせずに華やかなモデル業やタレント業でどんどん有名になれるほど外見的に飛び抜けて魅力的な男性からの求愛を拒絶できる女性は皆無であることも責められない。
逆もまた真なりで外見が美しい女性から好意を持たれた男性がその求愛を拒むことも難しいし断る理由も見つからない。
優しいからとか人柄が良いからとかの感情より、原始の時代に持っていた野生的で理屈抜きな本能で好意を抱く異性間の繋がりは複雑化した現代の人間社会の男女関係にも残っている。
魅力的な外見にどうしようもなく惹かれて好きになってしまう熱情と、優しさや責任感などの人間的関係で育まれた愛情との間に挟まれたせめぎ合いに苦しむ局面も人間には避けられない時がある。
一夫一妻制が社会制度の基盤にある人間社会では、一度夫婦関係になってしまったからには相手を変えることは相当な覚悟と困難と批判が伴ってくる。
恋愛の始まりは容姿や体臭や腕力などの社会性以外の要素ではじまる事が多いはずだが、一夫一妻制度の死ぬまでの長期間を一緒に生活することが定められた長い時間の途中で、新しい魅力のある異性に巡り会えた時のトラブルは人間特有の問題である事が再確認できる様な作品だった。
しかし心の傷や葛藤を抱えながらも許し合える可能性があるのも人間の特性かもしれない。

東出さんの大阪弁は大きな違和感が無くて、関西人特有の感情表現が大阪人の私にもすんなりと感情移入ができた。善良で人の良い大阪の若者らしさを演じている自然体の東出さんの演技力に感心した。
仲本工事さんの人との機微を大切にして生きてきた漁師の雰囲気も良い演技だった。