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寝ても覚めてものEITOのレビュー・感想・評価

寝ても覚めても(2018年製作の映画)
4.9
リアリズムに過度に富んだショットから(瓜二つの男、唐田えりかの「剥き出しの女感」等の)設定の非現実的な要素への着眼点の変化を見事に映し出すことによって、物語が僕自身の感情を侵食しエスカレートしていく瞬間を明確に感じた。

『ドライブ・マイ・カー』と今作品を「映画という空間の作り方」において比較してみると、前者は「徐々に明らかになる真実は大体がキャラクター間で共有できる1つのテーマであり、早い段階から空間が形成されていた」のに対し、後者は「異なるベクトルを向いた諸要素(上記の変化、各登場人物の感情曲線etc...)による乱雑さを、時間をかけて、順を踏みながら明確に提示することで空間を作っていた」ように感じた。

そうであると仮定したときにこの物語の進め方が今作で発揮した効果が2つ考えられる。
1つは「唐田えりかへの共感」
実直で、生々しく、執着心のある彼女の性格はあくまで「映画用」と言えるほど、浮つく性格になってはしまったが、それは「ドラマをしっかり見せなかったらの話」で、全ての決断にしっかりと彼女なりの「正しさ」を写すことでよりディープな展開を確固たるものしていたように感じる。
2つ目は、「認識できるがためのカオスではなく、奇妙さ」
とてつもなく気持ち悪い展開を堅実に丁寧に描いた結果、観客に全てをある程度理解させた上でエンディングのあの何とも言えない感覚に導くことができたのだと思った。

序盤の映像はある意味素人臭すぎて好きになれなかったけど、エンディング特に2人で走るシーンはとんでもなく圧巻のものだった。
展開分かったら2回目はより心地いいと思うのである意味スルメだと思う。
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