ナリア

寝ても覚めてものナリアのレビュー・感想・評価

寝ても覚めても(2018年製作の映画)
4.6
濱口監督の商業映画デビュー作品

先ずは主演の二人の演技力に脱帽
つかみどころのない麦と、誠実に現実を生きる亮平を一人二役で演じきった東出昌大
一見ふわふわとしつつ、芯のある信念のこもった言葉を吐く朝子という2つの側面をもつ人物をつくりあげた唐田えりか
そして、その一役と一つの側面が呼応し合うようなキャラクター造形、人間関係にも流石のひと言

濱口作品を観る度に僕の価値観は平衡感覚を失い
正直、僕の人生経験や語彙力では語れない…と打ちのめされる
その実「PASSION」も「ハッピーアワー」もレビューしきれていない

商業デビューといっても、今までとテーマはブレていない(はず)
というより商業作品だからこそ、そこは今まで以上に明白になっている(題材がもう既にね笑)
自己と他者。外見と中身。本音と建前。理解と反発。パッシブとアクティブ。etc.(二項に挟まれた“と”そのもの)

何度、同じものを見せられても毎度心をえぐられるのは濱口監督の作家性を如実に物語っている

作家性といえば今回も奇跡的なショットがあった
クライマックス
堤防を走る二人の後を追いかける様に雲の影が晴れてゆく
奇跡なのか狙ったのか、定かではない
でも僕は映画が映し出す奇跡を信じたい

映画館で体験した奇跡を、僕たちの生活に持ち帰る。でなければ映画館で映画を見る意味がない
おそらく濱口監督自身もそれを信じているはずだから


平衡感覚を失いふらふらと劇場を出た先の物販コーナーでみた「ハッピーアワー」のBlu-ray
濱口監督にまた何かを突き付けられている様な気がした
ナリア

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