ハル

さよならの朝に約束の花をかざろうのハルのレビュー・感想・評価

3.8
昔の名作をスクリーンで見る感動がやみつきになり、今回もFilmarksさんの『プレチケ』企画に参戦。

冒頭、隔絶されたヒビオルの一族が機を織り生活するくだりから「あ、これが2時間続くのはちょっと退屈かも」と思ってしまう。
しかし、物語はそこから一転。
侵略にさらされ、一族がバラバラになる予想外の展開へ。
ここからが本当のスタート。

生と死、親と子、そして血筋。
侵略戦争に巻き込まれたマキアはたまたま拾った赤ちゃんを母親として育てる決意をする。
だが、ヒビオルの寿命は人間のものより遥かに長い。
つまり、エリアルはやがてマキアより先に死ぬ事が決まっている。
「親より先に死ぬ子供は一番の親不孝者」
言葉が示す通り、マキアとエリアルという血の繋がらない親子の人生は一筋縄ではいかない。
この二人の関係性が物語の軸。

どちらの気持ちもよく分かるし、互いを思えば思うほどぶつかり合いすれ違うのも理解できた。
僕は血より“想い”のほうが遥かに大切だと思うんだけど…実際にこうした関係性になったら考えは変わるのかもしれない。
特に子供側は複雑な胸中になるよね…
親子の形は千差万別。
家族の数だけ正解はあると思うが、画一的な答えはない分、色々考えさせられてしまう。

終盤の戦争を経て、一つの形が見えたあとに言葉が紡がれる。
「新しい別れを経験するため、次へ向かおう」
胸がジワっとした。
別れ=悲しいではなく、別れ=繋がり。
空しき固定観念の破壊。
“別れの一族”と呼ばれる彼女達に新しい答えを定義したラストは凄く良かったな。

今作は終盤にキーファクトがどんどんリンクしていく構成。
ただ、エリアルの人生そのものを描いているため、時間の関係上、飛び飛びになっていくシーンも目立つ。
そこは希薄に感じてしまった部分。
でもトータルとして見れば、練り込まれた設定、究極的に美しい世界観が人気作であることを証左していたように感じられた。

今回のプレチケ企画も吟味を重ねて選考しているだけあって、やはり素晴らしかった。
あまりに登場人物達の心が美しすぎてしまい、汚れちまった僕には眩しかったけどね(笑)
澄み切った言葉の数々がすんなり入ってくるには、もうピュア度が足りないんだよ…

次回は9月15日から今敏監督の『パーフェクトブルー』が4Kリマスター版で上映されるため、そちらも楽しみ。
マッドハウスの問題作と評判な上に初見だから既にワクワクが止まらない。
ハル

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