Millet

さよならの朝に約束の花をかざろうのMilletのネタバレレビュー・内容・結末

1.6

このレビューはネタバレを含みます

自分が母親じゃないうえに毒親育ちだったからか全然泣けなかったのかな?
でもこの作品自体がすごく勿体無いことをしているような気もしている。
同脚本家の手がけている『あの日見た花の名前を僕たちはまだ知らない』も全く泣けずイライラしてしまった私には根本的にあってないのかも…
なのでレビューというか、本当に自分の為の作品に対しての疑問の捌け口として書きます。

外見は少女のまま歳を取らない長寿の一族のわりには「さよなら」の数は少なかった。
もっと後半みんながバッタバッタと死んでいくのを看取りまくってさよなら無双しながら作中の泣けそうな曲を流しておいたらファンタジーな設定を生かしつつもっと泣ける作品になったと思う。
エリアルの死もあっさり過ぎるので、それくらいやっても重たくならなかっただろう。

それからキャラクターの顔がそら豆みたいにのっぺりしているので、泣き顔とか苦しい顔に感情移入しにくく、特にこの作品は大事なところをはっきりと明言しないので、何を考えているかわからないシーンもあった。(エリアルが兵隊に志願した時、それを見ていたマキアがどこまで話を聞いていたのかとか、それを見てどう思っていたのかとかわからなかった)

戦争で傷ついたエリアルのそばでマキアが何か意味のわからないことを延々と語ってるシーンも、泣かせる演出だったのだろう。
でも比喩的、詩的過ぎて結局何が言いたかったのかわかりにくかった。全くわからないわけではないが、お別れのタイミングにこんなに間接的な表現はしない。
やっぱりマキアは人間とは違うから感性も違うのかな?人間は生きる時間が短いからはっきり気持ちを伝えるけど、マキア達はまだ余裕があるからポエミーなことを言ってのんびり暮らしてくんだ…。なんかフランス人みたいだ。

それから作品のテンポの問題。
長寿のマキアにとってはエリアルとの生活というのも一瞬のことなのか、瞬きをするたびにエリアルが成長しているようなシーンの移り変わりの速さ。

イオルフだとバレないようにした髪の色チェンジもすごく唐突に当たり前のことように変わっていて、え?これ誰?となりかけた。
エリアルを抱っこしていなかったら新キャラだった(イオルフや、それくらいの歳の少女はみんなめちゃくちゃ顔似てるので)

そこであり得ないくらい優しい周りの人に助けられながら育児しているので、あんまり育児の大変さみたいなの伝わってこなかったし、エリアルが家を出ていくシーンからマキアが誘拐?されてからもあっという間に数年が経っていて、マキアが囚われてからどんな生活を強いられていたのかとか、エリアルとディタの恋についてとかもっと数秒の映像でもよかったから見たかった。
なので結局エリアルがマキアを母親だと思ってない云々の話(恋愛感情みたいなものだったのか、ただの思春期だったのか、男としての葛藤?だったのか)もはっきりわからなかった。
で、いきなり「俺は父親になるんだ」だから、え?マキアを守りたい気持ち強まり過ぎて自分がマキアの父親になる宣言?それともマキアへの恋愛感情高まり過ぎてプロポーズするつもりなのか?と思った。ここら辺は作品の速度に追いつけなくなってきた瞬間だった。

子供の頃の小さな変化はえがくのに、マキアからディタへの愛にシフトして行く心の描写はない。
子供の頃のシーンで「ここにいると母さんが母さんじゃないみたい」というセリフは子供心や子供の観察眼をすごくよく表現していたのに、そこから先はものすごくストーリが駆け足。

それから一番納得いかなかったのはレイリアとメドメルだ。
これだけクリムを振り回し、彼の気持ちを無碍にするほど「メドメルに会いたい、抱きしめたい」気持ちだけで生きてきたのに、いざ再会となったシーンでは抱きしめもせず、娘をまともに見据えることもなく、いきなり飛び降り自殺をする。(レイリア本人もマキアが飛んで来て助けてくれたことに驚いていた&自分は自由という表現で自殺と推測)
血が繋がっていなくてもエリアルを愛したマキアと対になるように、血が繋がっていても愛せない子がいるみたいなことなのかもしれないが、メドメル立場なさ過ぎて可哀想だった。
しかも父親はサッサと自分を置いて逃げて、自国は敗戦し王族の生き残りである自分にこれから待っているのは辛いものだとわかっているのに、やっと会えたお母さんからは忘れ去られる。
レイリアにとっては辛い城での暮らしだったのだろうが、それなら最初にパレードからクリムとマキアが助け出そうとした時に一緒に逃げてしまえばよかった。かたくなに自分で残ることを選択して、最後には自分の選択に付き纏った責任も何もかもほんのちょっとのほころび扱い。いくら心のままに生きるべきだとしてもな…

ちょっとショッキング過ぎたので以下レイリアのセリフ

「私はイオルフのレイリア
じじゃ馬で 跳ねっ返りで 男勝りで
そして 自由なの

私は 跳べる

マキア
そう あなたも飛んだのね

さようなら 私のことは忘れて
私も忘れるわ
城での暮らしは この朝のことは
ヒビオルには書かない
長い長い記憶の中で忘れるの
私は忘れ去る
そう ほんのちょっとのほころびよ」


ちょっと、いやだいぶ勿体無いのと、メドメルの不憫さで星は低いけれど、脳死で見る分にはそれなりに泣ける音楽と映像の連続なので浄化してくれるかも。
ただ本当に、優しい切ないだけの物語ではないです。

ラストにマキアが着てた服装がセイバーみを感じた。ヴァイオレットエバーガーデンで泣けた人なら物語の綺麗なところだけ救って泣けそう。
(一部の人からヴァイオレットが京アニのセイバーと言われているので思い出した)

マキアの「約束…やぶっちゃう」は「めんまみーつけた」「見つかっちゃったぁ」っぽかった。
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