LalaーMukuーMerry

ヴィクトリア女王 最期の秘密のLalaーMukuーMerryのレビュー・感想・評価

4.5
私にとってヴィクトリア女王とは、世界中に植民地を持ち大英帝国が最も繁栄をした時代19世紀に長い間女王の座にいた人物、くらいの認識しかない。
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過ぎ去った過去の事実は一つだが、新しい史料の発見によってその見方は変わる。この作品は2010年に、死後約100年たって発見された主人公の日記によって、最晩年の女王の人となりに修正を加えるもの。それもとても良い方向に。
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地位の低い一介の役人だったインド人の青年アブドゥル、女王陛下にインドからの献上品を直にお渡しするという大役を何故か授かり、わざわざイギリス本国に行くことに。「絶対に陛下を見てはいけない」という指示に反して彼が思わずとってしまった行動。女王の目に留まった彼は、従僕として王室に召し抱えられることに。
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女王の知らない世界(インド)の素晴らしさを女王に伝えようとする、誠実なアブドゥルの人柄に強く惹かれた女王は、彼をムンシ(師)と呼んで、インドの言葉や文字、イスラムの教え(彼はヒンドゥー教ではなくイスラム教徒だった)を学び始める・・・
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超豪華な晩餐会シーン。チャーミングなお婆ちゃん女王。陛下の行動に戸惑う周囲のハラハラ。ユーモラスな雰囲気で進むストーリー展開に惹き込まれます。
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人種、宗教、因習といった偏見の壁を越えて、自分の感性を大切にして友情を築いた女王とアブドゥル。100年以上も前に現代に通じる考えを身につけていた二人がいたという驚きと感動がありました。
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それに引きかえ、女王が亡くなるや否や次の国王がとった行動には本当にがっかりしたよ。メンツにこだわる世界のリーダーたちによって分断がすすむ今の世界。そういうものにはNOと言い、希望につながるお手本を見せてくれた良い映画でした。