風の旅人

フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法の風の旅人のネタバレレビュー・内容・結末

4.0

このレビューはネタバレを含みます

フロリダの魔法の国ディズニー・ワールドのすぐそばにある安モーテルで、その日暮らしをする親子の日常を描いた映画。
紫色をしたその名もマジック・キャッスルと名づけられた安モーテルは、サブプライム住宅ローン危機の煽りを受け、長期滞在する低所得者たちで溢れていた。
そんな大人の事情をよそに、創意工夫を凝らして遊びに興じる子どもたち。
この映画は現実を切り取ることに重きを置き、子どもの目線で貧困を浮かび上がらせる。
パステル・カラーのカラフルな街並みの片隅で、貧困に喘ぐ親子がいる現実がリアルに伝わってきた。
『万引き家族』もそうだったが、貧富の格差の広がりは世界的な現象なのだろう。
どんなに貧しくても、子どもにとっての世界は苦しいものではなく、楽しいものであることが救いだった。
しかし子どもの放火、親の売春が発覚し、児童福祉局に通報されたことから幸せな日々は終わりを告げる。
タイトルの『The Florida Project』は、ディズニーのリゾート開発計画と低所得者向け公営住宅(団地)のダブル・ミーニングである。
貧困という現実は、映画が物語として消費されることを拒みつづけるが、最後にムーニー(ブルックリン・プリンス)が親友のジャンシー(ヴァレリア・コット)とディズニー・ワールドのシンデレラ城を目指す「夢のような」出来事で幕を閉じる。
ムーニーはシンデレラになれるのだろうか。
シンデレラ城があるマジック・キングダムの花火は、ウィッシュ(希望)と名づけられている。
我々観客は安モーテルの管理人ボビー(ウィレム・デフォー)のように見守ることしかできない。
風の旅人

風の旅人