masayaan

フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法のmasayaanのレビュー・感想・評価

4.4
曖昧な群像ではなく、明確に「貧困のこちら側」からの視点で撮られた映画であり、それ自体がメッセージなのだろう。つまり、この新進気鋭は、ダルデンヌ兄弟が貧困の題材に対して冷酷なまでに距離を保つのとは微妙に異なり、それに対して愛情にすら似た眼差しを注いでいるという事だ。

ただし、余分な添加物はなく、「貧困のこちら側」以上の何をも付け加えられないのは、この作家の忍耐強さとプライドの賜物だろう。どぶネズミこそ本当の美しさを知ってるとか、そういう安易な逆説ではない。どぶネズミは、どぶの汚さを知っているのだ。そういう映画だ。

子供たちは、たくさんのドアの前を何でもなく横切っていく。ぎゃあぎゃあと笑いながら、印象的なロングショットの中で。対照的に大人たちは、いつでもドアの前で立ち止まり、何かを話し込んでいる。そんな時は大抵、あまり良い事は起こっていないのだが。

そんな子供たちが、ドアの前で深刻な表情で立ち止まり、話し込む時、何かが起こるだろう。


PS、母親の連れ込んだ客がユニットバスを覗いたときの、娘の息遣いが凄まじい。必見。
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