せっかくだから、どうして好きになれなかったか考えてみる。
どんなひとにでも母親になる権利はあるし、母親である権利もあることは分かっている。でも、いくら底辺でも、人間としての最低限度のマナーっちゅーもんは身に付けてないといけない。子供がいるならなおのこと、彼らのお手本にならなきゃいけないと思うから。
教養がなくてもいいんです、ルールを知らなくてもいいんです。シングルマザーでもいいんです、むしろ凄いな、えらいなって思うよ。でもね、本当に仕事ないのかなって疑問に思ってしまった。部屋に閉じこもったまま、タバコを吸うかマリファナを吸うか、携帯見てるかベッドに横たわってテレビ見てるだけじゃん。なんとかしなきゃ、って思って進むのが売春やダフ屋じゃよろしくないでしょう。子供は大人が思うよりずっと見ているし、ずっと分かっているし、なんて説明するつもりなんだろう？切羽詰まっている状況なのは分かります、でも他の道はなかったのかなぁって残念になるよ。ヌきを拒否して仕事をクビになった時のプライドはどこにいっちゃったの？母親だからこそのプライド、見せてよ。示しがつかないよ、カッコ悪いと思ってしまうよ。AVの世界にいたあたしはずっとカラダで稼いできたし、それでいいと思っていたし、それを誇りにすら思っていた時期もあった。でも子供が生まれてみたら、とてもそんなこと出来ないって思った。ピュアな子供を目の前にして、自分の汚らわしさに嫌気が差してあたしは多分自分を嫌いになってしまうと思うから。罪悪感みたいなさ、なんか後ろめたさみたいなものは、なかったのかなあ。あの母親のように、あたしも手段は選ばない人間だったけど、子供の存在がそうはさせないよ。違うかなあ。あんなに怒りをあらわにしたり、感情のまま生きている彼女だからこそ、子供をごまかすような、子供に隠し事をするようなことをして欲しくなかったんだよ。事情があるのかもしれないけど、もっと違う形でやれるんじゃないの？ってモヤモヤしてしまった。
子供に罪はない。何にも悪くない。あんな環境にいたって楽しそうにはしゃぐ姿をさ、あの天真爛漫な無邪気さを奪う権利は誰にもないから。あんな母親でも、子供にとっては唯一の大切な家族だもんな。どんな母親であろうと無条件で好きでいてくれるし愛や笑顔をくれるのは、子供の方なんだよね。せめて子供にだけはしあわせになって欲しい、どうか母親とおなじ道を歩まぬよう、祈るような気持ち。親友との別れに気付いてしまった時、改めて子供は大人が思う以上に物事を分かっているし、想像以上に大人びていたり、しっかりしていたりするな、と思った、だからこそ子供らしく泣いてしまう姿は悲しく映った。住んでいる世界はあんなに色とりどりで明るく眩しいくらいなのにね、彼女たちの現実はそうじゃなかった、余計に悲しいね。湿度まで伝わってきそうな夕方と、そこに灯る明かりが好きだったな。
