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奇跡の絆のkissenger800のレビュー・感想・評価

奇跡の絆(2017年製作の映画)
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実話ならしょうがない、って感想が興味深いんですよね。
「純然たるフィクションならこんなご都合主義展開は唾棄すべきだが、実話だというならその感想は取り下げる」
自分のストレートな反応は大事にすべきじゃないですか。実話だろうが創作だろうが。
自分しか成り手がない筈の審判役をアウトソースしちゃうのって-穏健な表現に留めると-「大胆」ですなあ、って思う。

実話ならまあ。
という感想を量産する本作のテーマが(感情の理路を神に委託する)宗教is何。なのは、この数十年続くbased on a true story興隆との関連で面白かったですね。
真面目に作っているとしか思えない製作者からは無論、このストーリーを正面から受け止められるひとたちからも、バチアタリと呼ばれて仕方がない、そんな不埒な見方をしていた私。
でもさあ、ノンフィクションなら自分の感想より事実が優先される、って聞き分け良い風潮はよくないよ。
・実話かあ、ってフィルターを外した感想はどうか
・そもそも「実話」って何
みたいな点こそ、しつこく考え続けたい。

なお、物語としては並でしかないところ、アンドレス・セラーノ「Ku Klux Klan」(写真)とか讃美歌320番(音楽)とかウィリアム・ブレイク「天国と地獄の結婚」(文学)等、エピソード群の置き方には感心しました。必然と無造作の間の、ちょうどいい感じ。あれは作り手のセンス。
それに比べりゃ俳優陣はそれぞれ普通の仕事をしていた印象しか残らず、唯一の例外がジョン・ヴォイト、アンジー父。年功序列のおかげで極度にオイシイ役をもらっていたのはさすがにズルいね。
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