グラッデン

映画キラキラ☆プリキュアアラモード パリッと!想い出のミルフィーユ!のグラッデンのレビュー・感想・評価

3.9
映画館のシリーズ作品の鑑賞は『映画 Yes!プリキュア5 鏡の国のミラクル大冒険!』以来、約10年ぶり(汗) 応援上映の老舗・ミラクルライト採用は同作品からとなりましたが、すっかりと定着したのだなとしみじみ思いながら鑑賞しておりました(気がつけば、同年代が親世代になっているという現実に目を背けながら)

前置きが長くなりましたが、本作は非常に楽しく鑑賞することができました。単発のエピソードとしても十分楽しめますが、TVシリーズの延長としても非常に魅力的なシナリオになっていたと思います。

途中加入のキャラ・キュアパルフェ=キラ星シエルにフォーカスした本作のテーマは、本シリーズの肝となる「パティシエとは何か?」を彼女なりの視点から突き詰めたストーリーであったと思います。

ある事象を経てスランプに陥った彼女は、独創性を追求する師匠との再会を経て、才能を磨くために群れることなく孤高であることを促します。一方、彼女は、修行を積んだ仲間を失った過去と仲間たちと同じ道を歩む現在から、大いに悩むことになる。そして、今回彼女たちに立ち向かうことになる敵役もまた、パティシエの才能と評価から生まれたものとなる。

作中に展開される、それぞれの考え方に対して、プリキュアたちは相反するものを真っ向から否定することなく、考え方を認めたうえで、より良き方向に導こうとします。このシナリオ運びを大人目線で何度も頷きながら鑑賞していました。白黒をつけることが大切なのではなく相互理解を深め、その上で最善の着地点を模索するというプロセスは現実社会でも見習いたい姿勢ではないかと思いました。

このような柔軟性を感じるシナリオを土台にしながらも、作品全般も抜群のエンタメ性。映画版ならではの趣向を凝らした仕掛けあり、予告編にも出てきた魔法使いチームのリリーフもシリーズファンには嬉しい演出。また、プリキュアファンを自称する悠木碧さん演じるキャラの憎めなさぶり、本年に公開された『モアナと伝説の海』におけるマウイ役の記憶も新しい尾上さんの怪演ぶりも素晴らしかったです。

人気シリーズが人気たり得るのは、伝統と革新を大切にして進化し続けていると日々の鑑賞から感じておりますが、そうした姿勢を本作の中でも感じました。いい年した大人が息を潜めて見に行った甲斐がありました(笑)