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祝福~オラとニコデムの家~のJeffreyのレビュー・感想・評価

3.0
「祝福~オラとニコデムの家~」

冒頭、ポーランド、ワルシャワ郊外の街セロツク。14歳の少女、アルコール問題、父親と自閉症の13歳の弟。母親とは別居、違う男性、家事、面倒、初聖体式、家族のあり方と再会。今、少女は夢を見る。家族が1つになりますように…本作は2017年ヨーロッパ映画賞を始めとし、山形国際ドキュメンタリー映画祭で大賞受賞したポーランドの女性監督アンナ・ザメツカによる75分のドキュメンタリー映画で、この度DVDを購入して初鑑賞したが良かった。まず、この作品は様々な困難を抱える家族の姿を少女に寄り添いながら映し出している。



本作は冒頭から魅力的である。少年(13歳の弟)がダメだ、ダメだと言いながらズボンをベッドの上で脱ぐ。どうしてもズボンのベルトがうまく閉まらないようである。彼は独り言を言い、イラつき始める。それをひたすら固定ショットで捉えるカメラ。続いてい少女(14歳の姉)が教科書を机の上に出す。そして弟に恐竜や宗教的な話をする。


続いて、学校のクラスの描写に変わり、祈りをする生徒たちの描写。携帯をいじるお姉さん、弟の帰りの身支度を整え2人で外へ出る。家の掃除をしている少女、父親と一緒にソファーでテレビ番組を見る。"こんばんは"と言う言葉で福祉の人が家にやってくる。タバコを片手に父親が玄関まで向かい入れる。福祉の男性は少女に調子はどうかと優しく聞く。少女は笑顔になり答える。



続いてアルコール中毒と言う問題を抱える父親に福祉の男性があれこれ指示をする(少しばかりもめる)。それを別の部屋から漏れ聞く少女のうんざりする表情、パンを焼き、父親から明日の分だといい現金を受け取る少女。

続いて、カメラは変わり弟が教会でイエス様に捧げる歌を歌う。側にはお姉さんの姿もある。そして牧師様の話を聞き始める。カットは代わり、窓際の暗い部屋で少女が母親に連絡をしている。どうやら25日は弟の初聖体式のようであり、来れるかを聞いているようだ。母親はわからないと濁す。

続いて学校の描写に変わり、弟が椅子を頭の上に抱える姿を教師が注意する。そしてカメラは廊下からクラスの中に移り変わり、どうやら音楽の授業を受けているようだ(弟)。続いて、姉がタブレットで何かを調べている。その目の前には弟がいて彼は、僕は空気ではないのだと姉に伝える。そして彼が1人で風呂場で水につかる描写へと変わる。そしてお姉さんがやってきて、彼の頭を洗い流す。


そして姉貴が父親に連絡をする(どうやらバーでお酒を飲んでいたようで、約束の時間に遅刻しているようだ)。姉さんは電話先でイライラしている。そして姉弟揃ってご飯を食べている描写へと変わる。そして父親が帰宅して、プレゼントを買ってきて、姉に腕時計やスマートフォンケースを買い与える。それを素直にありがとうと伝える姉。そして姉が弟に勉強を教えるシーンへと変わる。


そして、牧師の前で弟がきちんと暗記したかを見てもらう場面へと変わり、お姉さんが友達と戯れる画へと変わる。そしてお姉さんが自宅へ帰るとテレビがないと言い、泣きながら部屋中を探す(見たい番組があるようだ)。そしてベッドの中に潜っている弟のワンシーンを映し出し、姉貴が洋服にアイロンをかけているショットへと変わる。

そして、少年が教会で罪を告白するシーンへと変わる。そこでは様々なことを聞かれる(動物を虐めてるか、怠けてないか等である)。そして家で姉貴と一緒にアーメンの練習をする。そして弟に靴を履かせて自分も黄色いワンピースを着る。そしていざ弟の初聖体式へ…。


さて、物語はポーランドのワルシャワ郊外の街に住む14歳の少女オラと自閉症の13歳の弟にニコデムを基軸にして、家族の様々な問題を映し出しているのだが、基本的に息子(弟)を全面的にサポートするのは姉貴の少女であり、母親は別の男と家を出て行ってしまい、父親は酒浸りと言う問題を抱えている。

そんな中、弟の初聖体式が成功すればもう一度家族が1つになれると信じて夢見ている少女が懸命に弟のそれを成功に導こうと必死に奮闘する。ところが現実はそう甘くなくて、色々と壁にぶつかってしまう…と簡単に説明するとこんな感じで、監督自身が家族が撮影を受け入れてくれるまで長い時間をかけて本作にこぎつけたとのことである。

この作品はドキュメンタリーとされているのだが、どこまでがフィクションなのかよくわからない部分も正直ある。非常にドラマ仕立てな完成をしているからだ。

だが、この作品を冷静に見てみれば非常に単純な問題解決が鮮明に写し出されている。それは母親が戻ってくることである。少女が必死に頑張って生きてる事柄については、母親が家族のもとに再び戻ってきて、一緒になると言うことで彼女の希望は達成し、この厳しい日常家庭が元に戻るそんな簡単なことが現実としては難しくて、こういった生活の責任を押し付けてしまう母親の存在と言うのは果たしてどうなのだろうかと思ってしまう。


といっても親の責任と言うのは果たして何なのかと言うのもこの作品には描かれている。


その点は非常に良かったと思う。このザメツカと言う監督はポーランドの映画監督とされ、今作が長編デビュー作だが、もともと脚本家でプロデューサーで、ワルシャワとコペンハーゲンでジャーナリズムと人類学と写真学を学んでいたと言うことである。また彼女の言葉を引用するならこの作品はどうやらヘンゼルとグレーテルとの事である。


ヘンゼルとグレーテルと言うのはグリム童話の代表的な物語と言う事は周知の通りだが、1812年の初版から1857年の第7版まで様々な書き加えがあり、その後も現在に至るまで多くのバージョンが登場している。


ポーランドと言うのは親日国で非常に私自身好きな国である(行った事は無いのだが)。様々な素晴らしい作品もある、いわゆるポーランド派だ。ポーランド共和国はバルト海に面した中央ヨーロッパに位置しており、首都はワルシャワ。16世紀から17世紀にかけてポーランド・リトアニア共和国を形成したが、18世紀に入ると4度にわたり国土が隣国によって分割され消滅されている事は誰もが学校で習うと思う。


第1次世界大戦後の1918年に独立を回復したが、第2世界大戦時ナチスドイツとソ連に侵略され再び国道が分割されたことも周知の通りだ。戦後の1952年に社会主義体制のポーランド人民共和国として国家主権を復活、1989年民主化により共和国となっている。


あまり聞き慣れない言葉があると思うのだが、初聖体式とは、初めて聖体を拝領する儀式のことである。キリスト教カトリックにおける教会の聖体礼儀においてイエス・キリストに変化したと信じられる特別なパンのことで、そのパンをいただく儀式を聖体拝領と言うらしい。

自分もあまり知らなかったため調べてみた。それで幼児で洗礼を受けている場合には、大体の場合が7歳から8歳位になるとの事なので、この作品の弟は13歳と言う事だからかなり遅めと感じてしまう。

そしてこの儀式は理解をしていない人には与えられることができないと言うことがあるため、劇中の中でも必死にお姉さんが弟に規定の勉強を教えていたと言うことも納得がいける。そして式に参加する場合には女性なら白いドレス、男の子ならスーツを用意して式に参加すると言うのはカトリック国でとても重要な行事とされているため、作品の中でも2人はそのようなドレスコードをしていた。



この作品の主人公の姉弟の姉貴の気持ちが凄くわかる。両親がほとんど弟の面倒みてくれないで自分だけが弟の面倒を見て、それでも自分の時間もほとんど奪われてしまって不満が積もる中、現実は変えられなくて、ただひたすら悲しみも心に抑えて日々頑張って生きていくしかないこの理不尽な日常…かなりキツイ。

しかも弟は病気を抱えているし、なおさら大変だと思う。そんで父親はアル中で、母親は別の男と出て行ってしまったと言うえぐい現実…。とは言う物の、父親はわりかし頑張っているような感じがする、映画の中からは。


この映画のラストがすごく印象的に終わる。


残念ながらレンタルなどは開始されないようだ(配信を含む)。なので劇場で当時見た人か、もしくはDVDセル版で購入するしかないのかもしれない。
Jeffrey

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