Pigspearls

ニューヨーク公共図書館 エクス・リブリスのPigspearlsのレビュー・感想・評価

3.5
仕事のあとの疲れた頭で駆け込んだら字幕を脳が処理しきれずパンク状態。みんなものすごくよく喋る。(正直肩書きとインタビュー時期だけでも入れてほしかった)
ラストのグールド、超長尺かつ解説ゼロのドキュメンタリーにちょうどいい幕切れ。


前半けっこうつらくて、批判的な気持ちでみていたら、建築家の女性が図書館は人である、と語るあたりから覚醒。これ以上喋らせるの?もういいわよね?みたいな態度とジェスチャー、あれはあれでモノづくりに直接携わる人としてリアル。

しかし本=言葉の大切さを信じる人たちは日本だとおとなしめ文系にカテゴライズされがちだけど、ところ変わればだ。ニューヨーク公立図書館スタッフ、資金調達も企画も収集も研究もイベントも事務処理もぜんぶやる。めっちゃアクティビスト集団。

手話や点字、障害者、黒人、移民、pcを使いこなせない貧困層、そして子供たち。さまざまな社会的弱者へのアプローチが次々と描写され、その間にスタッフの会議が挿入される。
情報が増え続けて、(きょうのわたしのように)人間の処理能力を超えて頭からこぼれがちな中で、正しく意図を読み取り、必要とされる相手に合わせて伝えることの困難さ。
図書館を訪れる弱者はわたしたちのそう遠くない未来であり、司書たちは永遠に続くその困難さに立ち向かい、理知的生活を求める殉教者のようでもある。

個人的にはテーマ別の図版ライブラリのシーンがお気に入り。ジョセフコーネルは足繁く通い、ディエゴリベラはおそらくメキシコから取り寄せ、ウォーホルは盗んでいった、とエピソードを挙げてのライブラリ活用ワークショップ。すべての情報が電子化されたとしても、人間のアナログな手作業はクリエイティブに不可欠なのだろうなと信じられる何かがあった。
(著作権にうるさい日本では不可能だけれども)

政治に希望を持てない老齢のワイズマンが、半官半民の矛盾に立ち向かう公立図書館に希望を託しているように見えなくもない。