大道幸之丞

ニューヨーク公共図書館 エクス・リブリスの大道幸之丞のネタバレレビュー・内容・結末

5.0

このレビューはネタバレを含みます

ニューヨーク公共図書館はイギリスで言えばBBCであろうか。その時々に振り回される政府より確固たる「民主主義」のフォートレス(要塞)です。

この映画はまず3時間25分と映画としては大作だが、NYに来た貴方にニューヨーク公共図書館(NYPL)の92の施設のどこへでも自由に出入りできるIDカードを渡されたとしたら、あっという間に過ぎ去る時間でしょう。

この映画はまさにNYPLのフリーパスを受け取って丸一日過ごしたにふさわしい構成となっています。

緊迫したNYPL幹部丁々発止のやりとりかと思えば様々に開催される子供や高齢者へのイベント、イスラム系、黒人差別に関わるタブーなき数々の興味深き講演や、英国でもやや危なっかしい存在のエルビス・コステロやパティ・スミスのトークイベントでは彼らの言葉を巧みに引き出す有能なモデレーターたち、そしてNYPLに隣接した公園で思い思いに過ごす人々、NYPLの分館の景色や様子と、こぎみよく、映像は繋がれ飽きさせません。

印象的な言葉が出てきます。建築家のオランダ人女性が「図書館」の定義を語りますが、そこでは「図書館」は「蔵書」ではなく「人」なのだ。と語ります。したがってデジタル時代になったから要不要の俎上に上げられ性質ではないと。

この映画を観て感じたのは「自由の国アメリカ」を支えている象徴的なNYPLの存在と、翻って、ネットの断片的な情報だけでお手軽に物事を判断し炎上するような日本の軽い低リテラシー状況の国民達にこそ、しっかり書籍を踏まえて知識を深めてゆく権利が我々にはあるし、インテリジェンスと民主主義をしっかり支えて行かねばならないと考えさせられた。