アンソニー

戦争と平和のアンソニーのネタバレレビュー・内容・結末

戦争と平和(1965年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

この前発売されたBlu-ray版を
購入しました。
本編7時間越えということもあり
1部から4部まで分けられているので
一つずつ観ながら感想も交えて
最終的に点数やら総評をしたいと思います。

【1部】
この1部が全体の中でも
多くの時間を使って作られています。
2.3.4部は100分以内に収まっているのに
対して、1部は147分と長尺です。
やはり、キャラクターの関係性や
時代背景などを描くために
膨れ上がったのだと思いますが、
全体が423分と思えば可愛いものです。

全体的に詩的な作りとなっているので
状況を理解するのが大変でした。
そもそも、当時のフランスとロシアの
関係やその他諸国との関係など
知識が乏しいために
当たり前のように話が進みますが
初見では意味の分からないシーンが
いくつかあると思います。
あと、登場人物が心の声を話しているのか
単なるセリフなのかが
演出上判別しにくいと感じました。
画面の美しさや構図の素晴らしさなどで
余裕で観てられるのですが
より深く理解するには当時の歴史に
軽くでも触れておくのが得策ですね。

歴史モノ超大作特有の登場人物が
多過ぎて混乱するというのも
起こっていました。
複数人の視点から物語を紡いでいく
(主要人物は二人)ので、大変でした。
そもそも7時間越えというハードルの上に
詩的で歴史モノで…と色々な要素が
組み合わさった結果
難しく感じます。
しかし、戦場も豪邸も自然も
全てに力が入っていて圧倒的な
エキストラの数で「歴史」を
体現しています。
どこを切り取っても良いです。
戦争のシーンすごく良かった。
続きが気になります。


【2部】
1部とはうってかわって
幼かった資産家の娘が舞踏会へと
参加できる年齢になり
殿方との出会いを求める。という
恋愛要素が強いものとなっていました。
1部の残酷な戦場の様を観た後だと
舞踏会のシーンはとても華やかでした。
しかし、戦争はすぐそこまで迫っており
崩れゆく儚さも含んだ
なんとも形容し難い美しさ…。
正直、感動しました。

1部ほど視点がコロコロ変わらず
それに難しい戦争の話では無く
恋愛がメインだったのもあり
かなり分かりやすい内容でした。

あの心優しい少女が大きくなり
これから素晴らしい人生をおくるかと
思いきやあんなクズ野郎に
引っ掻き回されるとは
最高にやらしい脚本ですな!最低!
人間の内なる感情が爆発する瞬間、
それが一番美しく醜い。
本来共存し得ない二つが交わり
カオスが生まれるその瞬間!
至高です。
「さらば、わが愛覇王別姫」の後半の
文化大革命のシーンで
兄弟のように慕ってきた者たちが
生き残るために他人の秘密を暴露し、
侮辱して、軽蔑し合う…。
あれに似た美しさがありました。
自分もこんな事やりたい。
死ぬまでにやりたいね。

個人的に3部へ繋がるラスト。
めっちゃ良かったです。
ドーンと「1812」と文字が出て来て
再び戦争が始まろうとしている。
戦争と平和…まさに体現してます。


【3部】
どれだけの火薬と人を使えば
このシーンが撮れるのでしょうか?
40分ぐらいずっと爆発し続けていたし
死体の数も尋常じゃないし
戦争の異常さを物語っています。
3部は戦争だけに着眼点を置いていて
人間ドラマの部分は少なく感じました。
しかし、戦争と平和を語る上で
欠かせない役割を担っていると思います。
正直言うと爆発しまくりだったので
あまり言うこと無いです。
でも、戦場のシーンは圧巻でした。


【4部】
戦いにより甚大な被害を受けたロシアは
モスクワを捨て撤退する。
モスクワはフランス軍に占領され
金品などは全て奪われ、家屋は燃え
美しかった都は跡形も無く消えます。
フランス軍もかなりの被害を被ったので
これ以上の進軍はせずに撤退し、
結果としてロシアは国の防衛に
成功するのですが、
戦場だけが悲惨なのではなく
街に来た敵兵による略奪や暴力
(全員が悪者では無いですが)も
酷いものだと思い知りました。

戦争は終結し
破壊された街は早くも復興を始める。
世には平和が訪れた。
映画はここで終わりますが
この後にも戦争や争いは現代まで幾度も
行われていきます。
今自分は戦争と平和の狭間で生きていて
運良く平和な生活を送っています。
戦争の恐ろしさを忘れてはならない
人並みではありますがそう思いました。


【特典映像】
どのように撮影されていたのか、
その裏側が30分ほど描かれていました。
貴族の家もモスクワの街も
作られたセットだったというのに
驚きました。
実際に軍隊を借りたり
国からの支援金もあり
大規模なプロジェクトだった事が
伺えます。
DVDやBlu-rayの醍醐味って
やっぱり特典映像ですよね〜。
裏側観るのが本当に楽しいです。


【総合】
全体を通して内面をセリフとして語る場面と
長回しで表情や仕草を切り取る場面、
この二つを上手く使っているなと
思いました。
長い歴史を描いているので
尺が伸びるのも分かるのですが
必要以上(個人的な感覚)の長回しが
多数あったのが
この長尺の正体では無いかなと思います。
観せるシーンはとことん観せる。
異常なまでの繰り返し、
ただならぬこだわりを感じます。

後は漫画のように黒い線で
画面を分割して違う出来事を同時に
進めたり
二つの映像を半透明で重ねて映したり
監督の好みなのか分かりませんが
こういう演出が目立っていました。

本編がとんでもなく長いし
歴史の予備知識が無いと難解に感じるし
安易に人にオススメ出来る
作品でありませんが、
興味があるのであれば
観た方が良いと思います。
こんな経験は
この作品じゃないとできません。