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カーキ色の記憶のharukapiのレビュー・感想・評価

カーキ色の記憶(2016年製作の映画)
3.0
「大勢の人の死を、まるで自然現象かのように見ている」という言葉が印象的。詩的で美しい映像表現と語りの混じり方が『ショアー』みたいな作品だと思った。アラブの映画は叙情的過ぎて、やっぱり難解。アサド政権による悲劇は2011年の内戦勃発と共に始まったわけではなく、1982年のハマ大虐殺事件に象徴されるように1970、80年頃から続くものなんだと、監督を含めた5人の語りが紐解いていく。

上映後にあった監督と監修の方の対談時間も有意義だった、有難い。
共産主義の“赤色”とかナチスの“灰色”は割とよく聞くけど、シリアでは当局を表すのは“カーキ色”らしい。軍服だけでなく学校教育中の制服がカーキ色(しかも週に3時間は銃を使った軍事訓練)だったり、当局の人が乗っている車がカーキ色だったりして、誰しもがカーキ色と言えば…て共通認識の色らしい。
監督自身が難民の立場に置かれたという状況も作品に影響してるという話もあった。個人的には建物の破壊の映像よりも海を渡るときに着用したであろう大量の救急服の残骸たちの映像が改めてショッキングだった。
監督はシリアにいずれ戻るという強い意志を持っている中で、政府軍(亡くなった人々の9割は政府軍による虐殺)が公正に裁かれることが共存の条件だと言っていた。Transitional Justiceの重要性がひしひしと伝わる言葉。
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