ペジオ

マーウェンのペジオのレビュー・感想・評価

マーウェン(2018年製作の映画)
4.0
教えてくれてありがとう でも人形だって事は知ってるよ

日々妄想を生業としている身からすれば、「妄想の世界」の成り立ちについて凄く共感できる作りになっていた
基盤となる世界設定はそのままに、現実での新たな出逢いや知識の発見が取り込まれていった結果、「なんでもあり」な世界拡張が行われる(この「基盤となる世界設定はそのまま」というのが重要。ここから全部変えようとするとめっちゃエネルギーを消費するからオススメしない。映画の主人公の様にその世界が癒しや逃避といった意味合いを持つのであればなおさらだろう。)
「第二次大戦中のベルギー」という世界がまずあって、そこに「女兵士」や「魔女」が急遽組み込まれていったのだろう(実際劇中で更なる世界の拡張が行われる。序盤が「撮り直し」であるというのが「新たな世界観に沿った語り直し」であるという意味ですげーあるあるに感じた。)
そしてそれは「必要」だからされたのだ
つまり作っている本人は周りが思っているよりずっとこの世界の諸々の役割について「自覚的」であるという事
決して妄想に引っ張られて翻弄されている訳じゃないの
いつだって「本人の意思」で妄想の世界の行く先を決めているのだ
「こうだったらいいな」から「こうあるべきだ」へ
妄想の世界との距離の取り方として実に健全だなと思った(劇中主人公の心情が分かりづらいと聞いた。個人的には充分すぎるほど妄想世界で語られていると感じた。)

本人以外からあまり褒められた印象を持たれない「妄想」という行為
周りが理解してくれる優しさはあるが、きちんと「キモ~い事」として描いた事が真摯だなと(ニコルの様な反応を最初は誰もが抱いただろう。)
自分の妄想をあられもなく披露した結果、ちゃんと理解や評価を勝ち取った主人公は立派だ(行動に踏み切ったという点は有るが、主人公は別に成長したとは思わない。最初からしっかりした自己を持っていたというか…。この辺がゼメキスらしい。チャーリー・カウフマンが描けばまた違った感じになりそうだ。)

おそらくはゼメキスの製作動機も「共感」だったのだろう
現実と妄想のシームレスな繋ぎや人形らしい人形の動きはそれだけでも楽しいし、監督の過去作の「撮り直し」も観られる
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