かたゆき

キラー・メイズのかたゆきのレビュー・感想・評価

キラー・メイズ(2017年製作の映画)
2.5
ヒマを持て余した今年で30歳になろうという無職のダメ男。
何を思ったか、彼が自宅のリビングに段ボールで迷路を作り始めたことがそもそもの始まりだった。
もともと凝り性だったせいもあり、出来上がったそれはなんと作った本人ですら三日も出てこれないほどの超大作に。
迷い込んで出られなくなったという彼を救うため、同棲中の恋人や腐れ縁の友人たちが一致団結。
半信半疑に入口を潜ってみるとそこには本当に広大な迷路が拡がっていた!
しかも、内部には随所に危険な罠が仕掛けられていたのだった。
さらには危険な悪の化身ミノタウロスまで登場し、獲物を求めて辺りを徘徊し始める。
果たして彼らは無事にこの殺人迷路から抜け出すことが出来るのか?

アイデア一発勝負で撮られた、完全に低予算のそんな本作、あまり期待せずに今回鑑賞してみました。
舞台となる、全て段ボールで手造りされたであろうこのセットは確かにチープなんですけど、これがけっこう細かいところにまで独特のセンスや拘りが感じられて意外に最後まで観ていられる作品になってましたね、これ。
まあ一言で言い表すなら、エッジの効いたNHK教育の子供番組みたいな感じで、折り紙の鶴や虫がそこら中にわさわさ動き回っていたり、ピアノの鍵盤が何処までも続く部屋があったりとなかなかに独創的。
首を刎ねられた女性から噴き出す血が色鮮やかな紙吹雪なとこなんて、けっこうセンスを感じました。
他にも遠近法を使ったビックリハウス的な部屋や、入った者が全員チープな段ボール製パペットになっちゃう部屋など視覚的に飽きさせない工夫が施されているのもポイント高いです。
学生たちが自主製作で創ったようなノリで観たら、意外とセンス良かったみたいな感じかな。

とはいえ、脚本が同じくらいチープなのはいただけませんけど。
全く中身がないうえに、さして笑えないギャグが全編に渡って繰り返されるのがかなり寒い。
致命的なのは、こんな殺人迷路が何故出来上がってしまったのか、その根本的な原因を曖昧なままに終わらせてしまったこと。
とまあ、お話的には完全にナシだけど、この監督のヴィジュアル・センスにはほんのちょっとだけ将来性を感じました。
かたゆき

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