むらむら

キラー・メイズのむらむらのレビュー・感想・評価

キラー・メイズ(2017年製作の映画)
5.0
親からの仕送りで暮らす30歳のオッサンが、自宅で一人地道に段ボールの巨大迷路を作るという、ステイホームな週末を送る俺たちにもピッタリの内容。

段ボールで巨大迷路を作るって、まるで「こち亀」のエピソードに出てきそうな話だなー、と思って調べてみたら、段ボールで車を作る話はあった。秋本治、おそるべし……。

この段ボール迷路、「へレディタリー」冒頭にあったミニチュアハウスが限りなく貧乏になったような外観だが、どういう理屈なのか、広大な空間が中に広がっている。製作者のデイブは、これまで何も作り上げたことのない男だが、一念発起して一週間でこれを作り上げたらしい。

作ったはいいが出られなくなったデイブを助けようと、恋人のアニーからのSOSを聞いて様々な人達が集まってくる。友人、TVクルー、観光客、段ボールに詳しいホームレス……彼らはデイブを探すため、この巨大迷路に侵入することに。

迷路の中には、デイブが面白半分で作った殺人トラップが至るところに仕掛けてあり、何故かミノタウロスまでウロウロしている。他にも折り紙の鳥やら何やら、色々なギミックがてんこ盛り。

なんで殺人トラップなんか用意してんだよ、というのは、映画製作上の話だというのは分かりきってるのだが、俺は、知り合いのホラーマニアを思い出した。彼は、すごいホラー好きで、遊園地のお化けのバイトなんか嬉々としてやるようなマニアなんだけど、好きが高じて、自宅をお化け屋敷に改造したことがあるという。

「人がどういう反応するか、って考えると、色々と凝った仕掛けを作りたくなるんですよ」と、彼はそのときのことを熱く語ってくれたんだけど、デイブも、同じ気持ちだったんだと思う。せっかく作るなら、楽しんでもらいたいじゃない? それが命を落とすくらい本格的なトラップだったとしても。なので俺は、このデイブの行動自体は腑に落ちる。あと、男の子だから、xxxを作りたくなる気持ちも、痛いほど理解できた。

ちなみに、その知り合いの自宅お化け屋敷は、母ちゃんに怒られて3日で廃業したらしい。お化けも人の子、母ちゃんには敵わない。

話を本作に戻す。この映画では、東京ドームの二分の一の面積に匹敵する段ボールが、迷路の制作に使われたとのこと。撮影に用意されたスタジオは2つしかなかったので、一方で撮影をしている間、もう一方で次の部屋を作る、という突貫工事だったとのこと。それぞれの部屋が存在したのは、平均してたったの4時間らしく、美術の人、めちゃくちゃ大変だったろうなー。

OPやEDもポップで楽しいし、血まみれ描写もない。ほぼ段ボールだけで、こんなにポップで楽しい空間を見せてくれるって最高じゃない!? 

俺、段ボールって、中に入って敵地に潜入するくらいしか使い道がないと思ってたんだけど、こんな使い方があるんだ! って目から鱗でした。

職人芸的なバラエティ豊かな段ボール美術を楽しむだけでも、80分はあっという間です。楽しい作品が観たい方はぜひ!
むらむら

むらむら