フェミ研ゼミ

ビール・ストリートの恋人たちのフェミ研ゼミのレビュー・感想・評価

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観終わったあと心は揺れなかった。
監督の前作のムーンライトを観たときも、私の心は揺れなかった。
そのことが切ないような気もするけど、何も感じていないような感じもした。
何も感じないというと語弊があるけど、凪状態だった。

普段私が、毎週映画を観るのは無趣味で
何も感じない時間がもったいないので映画を観るのだが、
不思議と時間を無駄にしたという気持ちにならなかった。
不思議だった。

監督の映画をまだ2本しか知らないけれど
彼の映画は、怒りや喜びを誰かを分かち合いから、
というような情熱は感じず、息するような自然なもので。
ただただ静かな映画だった。
誰かの主観的な感情にのせた物語じゃなく、
美しく綴られた誰かの記憶を見ている感じだった。
ただ誰かの生活があった。
生活の中にはもちろん怒りや悲しみとか感情があるけど、
感情って色褪せたり、溢れたりして
いろんなリミットがあって、それを超えると静寂になっちゃうんじゃないかなあと思った。
でもその無みたいに見える静寂は、
映画を観終わった私が凪状態になったように、秋空みたいな哀愁があって切なくなるくらいにキレイなんだと思った。

なにも残らなかったのに、切なくてキレイだった。誰かが話したり笑ったり泣いたりしているのに静寂だった。

不思議な映画だった。
フェミ研ゼミ

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